木と金属とコンクリートと

数年前に静岡大学の農学部家畜飼育科で、木、金属、コンクリートという3種類の箱(ゲージ)をそれぞれ10箱ずつ使い、マウスの飼育をしてその生態を観察するという実験を行いました。それぞれの箱の形は、縦30cm、横17cm、深さ11cmと同じ大きさのものを使用しました。 普通、マウスは湿度60%の屋内実験室で飼育されていますが、この実験では屋外の小屋の中で、自然条件下で飼育実験を行いました。しばらくの間、オスとメスを別々にそれぞれの箱の中で飼育し、ある時期にオス、メス一緒にして交尾をさせ子供を産ませました。生まれてきた子供の23日間における様々な生態の様子を数字にまとめてみました。

すると、次のようなおどろく結果が出たのです。木の箱で育った子マウスの生存率は85.1%、金属の箱は41%、コンクリートの箱ではなんと6.9%の生存率でした。コンクリートの箱の場合、130匹生まれてきた子マウスが9匹しか生き残りませんでした。

 
  5日後 10日後 15日後 20日後 23日後
木製の箱

92%

90%

88%

88%

85%

金属の箱

62%

45%

43%

42%

41%

コンクリートの箱

41%

10%

8%

7%

7%

 

木材の持つ湿度調整機能や、熱伝導率の低さが他の材質と比べて優れていた ためこのような結果になったと思われます。

また、子マウスの体重の変化は、

 
  5日後 10日後 15日後 20日後
木製の箱

2.5g

5.2g

7.0g

12g

金属の箱

2.2g

4.3g

6.2g

8.2g

コンクリートの箱

2.2g

4.1g

5.6g

7.4g

 

となりました。木製の箱のマウスは発育が良いという結果が出ています。 これは、木以外の素材は体温が奪われるために、母親マウスが授乳のために腹ばいになる時間が短く、栄養不良の子供が出てしまったためと思われます。

開眼日(目が見えるようになるまでの日にち)は、木製の箱は15.6日、金属の箱は18.1日、コンクリートの箱は17.9日でした。 また、マウスを解剖し、臓器の発達がどのくらいかを量ったところ、子宮の平均重量では、木製の箱は31.66mg、金属の箱は14.36mg、コンクリートの箱は11.53mgという結果になりました。

以上のような肉体的な差ばかりではなく、精神的にもかなりの相違が出たそうです。木の箱で育った母親マウスは子供を育てようという優しい母親心が出ているが、コンクリートや金属の箱で育った母親マウスは、子供マウスを育てようとしない。しかも弱った子供マウスを食い殺してしまうという凶暴な母親になってしまったそうです。

現在の小・中学校の多くはコンクリートの校舎ですが、そこで学ぶ生徒や、教える先生方のイライラやストレスは木造の校舎よりも多いそうです。キレやすい現代の子供は、家庭のしつけだけが原因というわけではなく、こんなところの影響も案外大きいかもしれませんね。