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収支という言葉があります。
収入と支出のバランスと考えていいと思います。
ご家庭の収入に見合った支出に抑えなければ、家計は崩壊するかもしれません。
室内の温度も同じです。
収入=室温を上げる各要素
支出=室温を下げる各要素
と考えてみましょう!
例えば冬の場合です。
室温を上げてくれる要素を挙げてみます。
➀日射(太陽光)
②人体熱(体温)
③ペットの体温も同様です。
④照明器具や家電の発生熱(消費電力)
以上が意識しなくても室温を上げてくれる要素です。
➀であれば、窓の配置・形状・大きさ・種類やガラスの性能が大きく影響します。
日射って、バカに出来ません。
例えば1月の東京で12時に南面の窓に当たる太陽光は、600W/㎡と言われています。
陽の当たる2.0m×1.65mの窓が6箇所あれば、11.88kW×日照時間分の電気ストーブに該当するんです。
11.88kWと言えば、12畳用エアコン×3台分以上です。
凄すぎて涙が出ます・・・。
②であれば、大人・子供の区別と人数が大きく影響します。
大人の人数×100W、子供の人数×80Wという感じです。
一般的に③の影響は、それほど大きくないと思います。
④が意外と大きいんです。
例えば1400Wのドライヤーは、1400Wの電気ストーブと同じ位室温を高めてくれます。
朝30分×2名が使えば、1.4kWhの熱量になります。
最近減って来た白熱電球を使った照明も、意外と温めてくれます。
100Wの電球が3個ついている照明を4時間×3室使えば、3.6kWhの熱量です。
3.6kWのエアコンと言えば12畳用に当たります。
消費電力の大きいモノや使用時間の長いモノは、暖房効果が高いんです。
冷蔵庫なんて24時間熱を出し続けています。
電子レンジなんて、使う時間が少ないから意外とたいした事ありません。
深いでしょ?
次に室温を下げる要素を挙げてみます。
①隙間から漏れる熱
②外皮(屋根・天井・外壁・床・窓)から逃げる熱
③換気による熱ロス
以上が意識しなくても室温を下げてくれる要素です。
これらの発生を抑えれば、室温を下がらなくなる訳です。
イメージとしては、ケチケチモードで倹約に励む感じでしょうか。
外皮性能を高める(UA値を小さくする)事に一生懸命な方が最近増えたような気がします。
例えば
外壁に比べると窓から逃げる熱量が多いので、窓の性能を上げよう!
とか
窓は弱点だから減らしてみよう!
こんな感じです。
確かに外壁にした方が、逃げる熱が減るので外皮性能が高くなります。
これって、間違いなく建築ユーチューバーのお陰だと思います。
以前であれば、こんな話をしても、誰もまともに聞いてくれませんでした。
「フーン、そうなんだ・・・。」
「でも、デザインを重視したい!」
「窓が多い方がカッコイイじゃん!」
時代が変わった気がします。
感謝・感謝、ひたすら感謝です。
でも、収支を忘れてはダメなんです。
窓を壁にすれば、そこから逃げる熱が減ります。
つまり支出が減る訳です。
先程の例で言えば、2.0m×1.65mの窓を6個減らして壁にします。
この時の窓面積は、19.8㎡となります。
そうすると、逃げる熱が減ります。
窓のU値が1.7W/㎡・Kであれば、これに19.8㎡を掛け、内外温度差20℃を掛けます。
1.7W/㎡K×19.8㎡×20℃=673.2W
これが、窓から逃げる熱です。
でも外壁からも熱は逃げるんです。
外壁のU値が0.3W/㎡Kであれば、逃げる熱は118.8Wになります。
この差554.4Wが、窓から外壁に変えた効果となります。
一方、窓を無くすと日射による熱も無くなります。
11.88kWが、これに当たります。
支出は確かに減ったけど、収入も減っちゃった訳です。
554.4Wの熱を倹約したつもりでいたのに、11.8kWの熱を失ってしまった・・・。
陽の当たらない時間や天気の悪い日もあるでしょうが、結果的には損した事になります。
『損して得取れ!』という言葉があります。
回り道をして損をしているように見えても、コツコツと真面目にやっていれば、いつか日の目を見ることが出来るよ!
という意味らしいですが、短絡的に得しようとしたら却って損してしまった!
もう、日の目を見ることは出来ません。
正に逆の事をしてしまった事になります。
陽の当らない窓であれば、窓を無くして壁にするのは得策です。
でも、この場合は愚策としか言えません。
収支を考えるとは、こう言うことなんです。
これらの収支によって得られる室温を自然室温と言います。
エアコン等の暖房を使わなくても、収支のバランスが収入側に傾いていれば自然室温は高くなります。
そして暖房を利用して室温を上げようとした際に、これが重要となります。
冬季に自然室温が高い家であれば、暖房エネルギーは少なくなります。
でも、逆に夏季の冷房エネルギーは増加するかもしれません。
温かくなる分、エアコンに頑張って貰わないと・・・。
そんな事にならない為には、夏の収支を考える必要があります。
どちらかと言えば、こっちの方が難しいんですよね・・・。