こんなグラフがあります。

久し振りに、マニアックな話です。

こんなグラフがあります。

グラスウール(以下、GW)の使用温度と熱伝導率というタイトルが付けられていました。

ここにはGWの密度ごとに、平均温度0~70℃までの熱伝導率が記されています。

縦軸が熱伝導率、横軸が平均温度、線グラフの色が密度を示しています。

まず気が付くのは、密度が大きいほど熱伝導率が小さいという事。

そして、温度が高くなるほど熱伝導率が大きくなると事だと思います。

ここで、まずGWの密度について書いておきます。

各辺が1.0mの立方体があったとします。

この時の体積は、1.0m×1.0m×1.0m=1.0㎥となります。

この立方体いっぱいにGWを詰めれば、その体積は1.0㎥でしょ

この時のGW重量が10kgであれば、GW密度は10kg/㎥になります。

これを省略して、『10K』と表すことが多いですね。

この時の重量が16kgであれば、16Kとなります。

先程のグラフには、10~96KまでのGWが挙げられています。

次に、GWの密度と熱伝導率の関係を示したグラフを挙げてみました。

GWは同じ繊維径であれば、密度が大きいほどGW中の連続気泡室が細分化されるため熱伝導率が小さくなります。

ただし、64K以上になると熱伝導率はあまり変わらなくなります。

ちなみに、ここで注目して戴きたいのがグラフ中の『平均温度25℃』という表記です。

そう、GWは平均温度により熱伝導率が変わるんです。

だから平均温度を決めなければ、熱伝導を明記することが出来ません。

もう一度、最初のグラフを見てください。

例えば、住宅の断熱材として良く使われている16K(密度16kg/㎥)の場合を見てみましょう。

0℃の時の熱伝導率は0.036W/m・K位でしょうか

これが40℃になると、0.048W/m・K位になります。

さらに温度が上がり70℃になると、熱伝導率は0.058位

熱伝導率とは、厚さ1メートル×面積1㎡の材料を隔て、両側に1℃の温度差があるとした時に、1秒間にどれくらいの熱量が移動するかを表す指標です。

冬季、外気が0℃で室内温度が25℃であれば、温度差は25℃。

熱伝導率が0.036W/m・Kであれば1秒間に移動する熱量は、0.9Wです。

でも夏季、外気が40℃で室内温度が15℃(あり得ませんが・・・)であれば、同じ温度差であっても移動する熱量は1.2Wになります。

しかも屋根上温度はゆうに70℃を超えますから、熱伝導率は0.058W/m・Kになります。

室内温度を45℃に仮定しても、移動する熱量は1.45Wです。

同じ温度差25℃なのに、平均温度が変われば移動する熱量がこれだけ変わる訳です。

同じ断熱材を使っているのに、不思議ですよね

でも私達は、16Kのグラスウールであれば0.045W/m・Kという熱伝導率で計算します。

もちろん製品によっては、もっと熱伝導率の低いGWだってあります。

でも、平均温度が上がれば熱伝導率も大きくなるのは変わりません。

地球温暖化が進めば、当然平均気温は上昇します。

平均温度が上がれば、熱伝導率も大きくなります。

グラスウールの熱伝導率は、0.045W/m・Kのままで良いのかな

 

断熱材には、不思議な点がいっぱいあります。

例えば・・・。

各種断熱材の使用温度範囲という資料です。

これを見ると、GWの使用温度範囲は20~350℃くらいになっています。

でも、さっきのグラフでは0℃らスタートしていました。

どうゆう事

トーマス科学器械株式会社/営業部 TEL 03-3694-7771 / FAX 03-3693-6001 E-mail tms@tomasu.co.jp

恒温液槽を製作・販売している会社のようですが、HP内にこんな内容の記事が掲載されています。

弊社では次の2種類の保温材(断熱材)をその製品にあわせて選択し、安定した温度環境を実現する製品づくりに取り組んでいます。

使用温度域が常温(20℃)以上の恒温水槽・恒温油槽の場合はグラスウールを使用します。

グラスウール・・・ ガラスを繊維化して固めた空気をガラス繊維に閉じ込めることで優れた保温性(断熱性)を実現します。

しかし、低温で使用するとグラスウールの中の水分が結露してしまい、 保温効果を損なうだけではなく電気的な不具合の原因にもなります。

このタイプの恒温水槽は、常温以下でご使用しないでください。 

使用温度域が常温以下を含む低温恒温水槽の場合は発泡ウレタン・ウレタンを使用します。

発泡ウレタン・ ウレタンはその内部に空気の泡を含む構造でグラスウール 以上に保温性(断熱性)が高く、水分の結露が起こらない ため、低温での使用にも十分効果を発揮します。 

えっ

20℃以下では、保温効果が低下する

でも、断熱材にグラスウールを使った冷蔵庫もありますよね。

冷たい水や空気を運ぶダクトの廻りに、グラスウールを断熱材として巻き付けているのを良く見掛けます。

大丈夫なの

どうやら、水蒸気の侵入を防止する『アルミ箔』等を使った防湿層が『鍵』なんですね。

水蒸気の侵入を完璧に防ぐことが出来れば、問題ないようです。

水蒸気の侵入さえゼロであれば、GW16Kは0℃で0.036W/m・Kだと言う事。

でも水蒸気対策が完璧でないなら、使用状況によっては使用を検討した方が良いですよ。

こんな話、聞いた事ありますか

日本は、南北に長い国です。

北から南では、夏冬とも相当な温度差があります。

湿度だって、高い所もあれば低い所もあります。

断熱材の採用に当たっては細心の注意が必要です。

そして、しっかりとした現場監理が重要となります。

その為にも、こういう情報は、誰でもが知っているべきだと思います。

朝から固い話で、申し訳ありません・・・。

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