防湿シートと農業用マルチ

昨日、お客様から戴いた『お問い合わせ』の一部を転載させて戴きます。

経費削減の為、例えば農作業で使うようなビニールマルチを使うなどすれば安く上がる気がします。

御社の場合、こういった指定をしてお願いすることはできますか?

お住まいの住宅を暖かくしたいという方からのお問い合わせです。

壁内結露の怖さはご承知のようですが、防湿シート施工に関して懐疑的なのかもしれません。

躯体内に水蒸気が移動し、内外温度差により結露する現象を『壁内結露』といいます。

これを防ぐためには、室内から壁内に透過する水蒸気を止めるしかありません。

止めるための層を防湿層といい、ここに使われるのが防湿フィルムです。

防湿フィルムは、連続して隙間なく張る必要があります。

また継ぎ目を設ける場合には、必ず下地の上とし、重ねを充分に取り、重ね部分を木材等で挟む必要があります。

防湿フィルムは高いから、安い農業用マルチで代用できないの

これが質問の主旨だと思われます。

結論から言えば、『お勧めできません。』とお答えさせて戴きました。

その理由は色々ありますが、例えばフラット35S共通仕様書にはこんな記載があります。

気密工事(充填断熱工法または繊維系断熱材を用いた外張り断熱工法による場合)

材料・工法一般

1.気密工事に使用する気密材の種類及び品質は、次のとおりとします。

ただし、これと同等以上の気密性・強度・耐久性を有する材料の場合はその限りではありません。

(1)住宅用プラスチック系防湿フィルム(JIS A6930(住宅用プラスチック系防湿フィルム))またはこれと同等以上の気密性を有するもの。

(2)合板・石膏ボード・構造用パネル(JAS)またはこれと同等以上の気密性を有するもの。

(3)乾燥木材等。

(4)コンクリート部材。

2.気密工事に使用する防湿フィルムは、JIS A6930(住宅用プラスチック系防湿フィルム)に適合するもの、またはこれと同等以上の防湿性・強度および耐久性を有するものとします。

また、寸法は所定の重ね寸法が確保できるものとし、できるだけ幅広の長尺フィルムを用います。

3.防湿フィルムは連続させ、隙間のないように施工します。また、継ぎ目は下地材のある部分で原則100mm以上重ね合わせ、その部分を合板・石膏ボード・乾燥木材等で挟みつけます。

4.気密層の連続性を確保するため、気密材の継ぎ目の生じる部分に使用する気密補助材には、以下の材料その他これらに類する材料を用います。

(1)気密テープ(ブチル系テープ・アスファルト系テープ等、気密性または水密性のあるものとし、経年によって粘着性を失わないもの。)

(2)気密パッキン材(気密性のあるものとし、経年によって弾力性を失わないもの。)

(3)現場発泡断熱材(高い気密性を有するもの。)

(4)シーリング材(経年によって弾性と付着力を失わないもの。)

以下、壁・床・天井(または屋根)の施工、壁・床・天井(または屋根)の取合い部の施工等様々な記載があります。

ここで云う現場でJIS A6930(住宅用プラスチック系防湿フィルム)に適合するもの農作業で使うようなビニールマルチが該当していれば問題ありません。

でも適合していれば、適合している旨をアピールしていると思われます。

もしアピールが無ければ、非適合品と思って間違いありません。

試しにネットで『農業用マルチ』を検索をしてみました。

(オークラ)黒マルチ 厚み0.02mm 幅210cm×長さ200m 無孔タイプとあります。

5,038円/本(税込み)+送料550円

確かに安いと思います。

でも、厚さ0.02mmでは薄すぎて使えません。

破れるたびに気密テープ下に木材を当てて、気密テープを貼る。

この作業をどれだけ繰り返すことになのか・・・。

心配で施工費&テープ代&下地板代を算出できません。

でも幅と長さは申し分なし

これ1本で、家1件分を賄うことが出来ます。

でも念のため2本、みておきましょう。

締めて10,076円+送料550円。

でも黒は戴けません

下地が見えないから、透明にして欲しい

心配事もあります。

もしかしたら地震や台風で家が動いた際に、留め付けたタッカー針の穴がが拡がるかもしれません。

地震のたびに(地震で防湿フィルムが破れてないかな)なんて心配したくないですよね

一方、防湿フィルムの方は・・・

0.2mm×210cm×48mで定価20,400円(税別)となります。

これを4本使えば89,760円(税・送料込み)

値引きがあったとしても、高い・・・。

その差は、79,134円にもなります。

でも、施工性はバッチリです。

地震が来ても、簡単に破断する事はないでしょう。

実際の施工を見ればわかります。

0.1mmと0.2mmの差ですら、その施工性には雲泥の差があります。

まして0.02mmと0.2mmでは、月とスッポンどころではないかも・・・。

断言します。

防湿性能の低い高断熱住宅は、意味ありません。

この先50年を考えれば・・・。

80,000円を惜しむより、その80,000円を有意義に使うべきかと思います。

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