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昨日、合間をみて24時間換気システムの風量を測定しました。
なお24時間換気システムとは、窓を開けなくても外気の新鮮空気を室内に採り入れ、室内の汚染空気を外に排出する仕組みを言います。
そもそも換気が必要な理由は、『シックハウス症候群』の予防です。
2003年の建築基準法改正で導入が義務付けられました。
常時換気とも言われ、ゆっくりと家全体の空気を入れ替えるのが目的ですが、これを設置していればOKではないんです。
たとえ窓を閉めていても、家中の空気が2時間に1回以上新鮮空気に入れ替わる事を確認しなければ、OKとは言えません。
換気システムを設置する際には、必ず換気計画を立てます。
どこから、どのようなルートで汚染空気を排出させるのか。
そして、どこから、どのようなルートで新鮮空気を採り入れるのか。
その為に必要な動力と、給排気口やダクトの仕様や配置を決定します。
また現場は、これを形にすべく施工を行います。
当然管理も必要です。
設計・施工後の結果を測定し、計画通りの換気が行われているかどうかを確認するのが『換気風量測定』です。
弊社では建物の完成からお引渡しまでの間に、これを行うようにしています。
今回は、その様子を簡単にご紹介したいと思います。
なお、今回はダクト式第3種換気システムの場合です。
用意する物は、次の通り。
①換気図面・換気計算書
②脚立
③風量測定器
④筆記用具
⑤ノートパソコン
⑤については、必ずしも必要ではありません。
でも、あると便利なんです。
まずは、準備を行います。
壁に設置された自然給気口です。
これを全て開放しなければ、新鮮空気を採り入れることが出来ません。
弊社では、日本住環境㈱のスクェアフローを採用することが多いですね。
蓋を開けると、花粉フィルターが入っています。
このフィルターのお陰で、埃・虫・花粉の侵入をブロックする事が出来ます。
写真のように上向きに開放するのが基本です。
続いて天井に設置された排気口(壁や床に設置する場合もあります。)です。
ここから汚染空気を吸い込み、排出します。
弊社では、日本住環境㈱のオリフィスを採用することが多いですね。
写真は全開放(開度5)の状態です。
ガラリ部分に刻まれた数値に▲マークを合わせる事で、開度調整をする事が出来ます。
なお開度は数字が小さい程、排出できる空気の量が少なくなります。
ここで必要になるのが、①換気図面・換気計算書及び②脚立です。
換気図面や計算書に基づき、各排気口の開度を調整します。
脚立が無いと手が届きません。
高所作業につき、注意が必要です。
また開度調整って、意外と指先の力が必要となります。
硬くて回らないこともあるんです・・・。
開度調整後の排気口です。
なんか穴がずれていて、恰好悪いですよね・・・。
でも仕方ないんです。
全ての排気口の開度を調整したら、準備完了です。
全ての窓を閉め、いよいよ測定を開始します。
ここで使うのが③風量測定器です。
今回は、マノメーターを使用しました。
メーターの青い部分に、金属製ノズルの付いたチューブを挿します。
ちなみに青い方に挿すと負圧が測定出来、赤い方に挿すと正圧が測定できる仕組みです。
ノズルの長さは50cmほどあるので、天井にある排気口まで届くようになっています。
その為、測定時には脚立を必要としません。(天井が高い場合は必要ですが・・・。)
では、いよいよ測定開始です。
弊社では、設計者と私の2名で測定を行います。
設計者は換気システムのコントローラーの前に立ち、ダイヤルを換気計算書に書かれた値に合わせます。
今回は『2.5』でした。
そして私は、各排気口を回り、風量を計測します。
簡単です。
オリフィスの中央に開いた穴にノズル先端を挿せば、測定出来ますから・・・。
針が落ち着くまで、しばらく待つ必要がありますが、マノメーターの針が差す値を読めばいいんです。
大きな声で数値を読み上げます。
『3.0』という具合です。
ちなみにマノメーターはパスカル表示になっています。
すると設計者が、それぞれの風量を表に書き込んでいきます。
『開度2.5/主寝室3.0Pa』という具合です。
全ての排気風量を測定したら、ノートパソコンに打ち込みます。
合計風量が計算書通りになっているかどうかを判断する為です。
Pa表示を㎥/hに換算しなければなりませんから・・・。
現場にパソコンが無いと、風量がわからないんです。
事務所に戻って打ち込んでみたら、風量不足だった・・・。
また戻って測り直さなきゃ!
これじゃー、面倒でしょ?
合計風量が計算書通りになっていれば、コントローラーのダイヤル『2.5』が正しい訳です。
もし少なければダイヤルの値を大きくするし、多ければ値を小さくしなければなりません。
そして、各排気口の風量を再度測定します。
正しいダイヤルの位置が判ったら、次に各排気口の風量をそれぞれ確認します。
計算書に風量10㎥/hとあるけど、実際は8㎥/hしか出てないな。
という具合です。
計算書より小さければ開度を大きくし、逆に大きければ開度を小さくします。
個々の開度の調整をしても、全体風量は変わりません。
でも1つ開度調整すると、全ての排気風量のバランスが崩れてしまいます。
お風呂の排気量を増やそうとしたらトイレの排気量が減っちゃったとか、寝室の排気量を減らしたらトイレの排気量が増え過ぎたみたいに・・・。
何回も測定し直す羽目になるんです。
上に行ったり下に行ったり、何往復もする事になります。
くたくたです・・・。
ここで頼りになるのが経験値なんですよね。
とにかく経験を踏むしかありません。
いわゆる場数を踏むって奴です。
経験を積めば、無駄な測定を減らすことが出来ます!
たぶん・・・。
各排気量の調整が終わったら、コントローラーの値・開度・風量をまとめて報告書を作成します。
換気回数0.5回/hにするには、コントローラー『2.5』。
お出掛けの際には、コントローラー『2.0』。
なんてコメントも書き加えたりします。
これで、換気風量測定終了です。
換気風量は、ダクトの太さ・長さや曲がりの数で大きく変わります。
またダクトが潰れていたり、継手が多かったりしても、大きく変わります。
建物の隙間の多寡によっても、変わるんですよね・・・。
ちなみに隙間が多いと、排気風量が増えます。
でも、自然給気口からの給気量は増えません。
隙間から外気が侵入するからです。
計画と違った場所から空気が入ってきたら、計画換気とは言えないでしょ?
排気口付近の隙間から入った新鮮空気が、すぐに出ていってしまい、部屋の空気は入れ替わらない。
これをショートサーキットなんて言いますが、こんな事もあるんです。
気密性能を高める理由がここにあります。
詳しくは書きませんが・・・。
話を戻しましょう。
計画図の通りに配管出来なければ、計画通りの換気量を確保する事は出来ません。
少なければ換気不良になってしまいます。
その結果、臭い残りや結露、温度差が問題になるかもしれません。
また計画よりも風量が多い場合もあります。
多ければ良いんでしょ?
イエイエ違います。
確かに少ないよりは良いと思います。
でも換気風量が多ければ、換気による熱損失が増えてしまいます。
暖めた空気を捨て、外の冷気をたくさん採り入れる事になるからです。
つまり増エネになってしまう訳です。
計画通りの風量が確認出来ない換気システムって、機能していないのと変わりません。
もう一度言います。
換気システムは、設置して終わりではありません。
キチンと機能しているかどうかを確認する必要があります。
では誰が確認するの?
設計者でも良いし、現場監督でも良いんです。
施工業者だって構いません。
責任を持って報告書が書ければいいと思います。
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