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先日の北海道ツアーで拝見した『手作りの木製トリプルサッシ』について、書いてみようと思います。
これが、今回の主役です。
43年前に竣工し、その後はオーナーの手でメンテナンスが続けられ、現在に至っています。
拡大すると、こんな感じ。
嵌め殺し窓(FIX)と片開き窓の組み合わせでした。
木のフレームを大工が作り、そこに木の建具を吊り込みます。
木の建具は、建具屋さんが作ったそうです。
そしてガラスを嵌め込みます。
当時は、まだトリプルサッシなんてありません。
「ない物は作ればいい!」
と、言ったかどうかは定かではありません。
でも、そんな気概だったんだと思います。
構造は至ってシンプルです。
木製フレームに溝を彫り、3枚のガラスを入れ、それぞれの間に押縁を挟みます。
ちなみに現在の高性能サッシは、押縁のかわりに『スペーサー』と言われる緩衝材が使われています。
ペアガラスの写真を挙げてみました。
『樹脂スペーサー』と書かれた部分が、木材だと思ってください。
この当時、Low-E膜の貼られたガラスは販売されていませんでした。
その為、オーナーが、ご自分で『選択透過フィルム』を貼ったそうです。
選択透過フィルム?
選択した光波長を透過させるフィルムらしいので、今のLow-Eフィルムに近い機能を持っているんだと思います。
(私の勝手な想像ですが・・・。)
これで中空層にアルゴンガスでも封入されていれば、現在の高性能サッシと変わらないですよね。
凄いと思います。
でも残念ながら、中空層には空気しか入っていません。
現在のサッシほどシール性が高くないので、仮に不活性ガスを封入していたとしても、空気になってしまいます。
こればかりは、仕方ないと思います。
現在のサッシの熱の伝わり方を挙げてみました。
外気と室内に温度差があれば、熱は高い方から低い方に伝わります。
ガラス中央で考えれば、ガラスを伝わる熱伝導。
中空層で発生する熱対流。
そしてガラスからガラスに伝わる熱輻射。
個々の割合は異なるでしょうが、43年前に手作りされたガラスも基本的には同じしくみで熱を伝えます。
でも現在のガラスと異なる点があるんです。
例えば、中空層です。
ペアガラスが出始めた頃の中空層は6mm程度でした。
それが12mm程度となり、現在は16mm程度が主流になっています。
中空層を大きくする事で、断熱性が向上するからです。
でも16mmを超える中空層を見掛けることはありません。
中空層が16mmを超えると中空層内で対流が発生し、熱移動が大きくなるのが、その理由らしい・・・。
でも手作りガラスの中空層は、33~35mmもあります。
何故!?
「対流が起きないと、ガラス内部で結露が発生します。中空層を大きくすれば対流が発生するから結露を防ぐ事が可能です。」
との事。
おそらくシール性の低さも起因しているんでしょうね。
でも、そこまで考えてガラスを作っているんだ・・・。
本当に凄いですよね。
感動しました。
この写真をよく見ると、気付くことがあります。
コレ、手作りサッシの外側です。
水切板金とガラスの間に、黒いクサビらしきモノがあるでしょ?
これ、スペーサーなんです。
「外側のガラスと真ん中のガラスの間に結露が発生します。」
内部結露の事だと思います。
外側のガラスが冷やされて、中空層内の空気が露点を下回れば、当然結露します。
乾燥空気では無いので、現在のガラスよりも露点は高くなる筈。
結露水の出口が無いと、ガラスの中に溜まって水槽状態になってしまいます。
それを防ぐためには、排水スリットが必要です。
スリットを確保するために、ガラスと水切の間にクサビをかましているんです。
原理・原則が判っているからこそ、こんな事が出来るんですよね。
さすがだと思いました。
こんな凄いモノがゴロゴロと見られる凄い建物です。
まだまだ、伝えたい事が山ほどあります。
でも、このへんで八女てこうかな・・・。
このお宅の初代オーナーは、北海道大学工学部の名誉教授です。
既に亡くなってしまいましたが、現在も各地でご活躍している著名な建築実務者や指導者・研究者の先生に当たる人なんです。
凄い人だと思います。
また、現在のオーナーも負けず劣らず凄い人だと思います。
こんな素晴らしい建物を、ご自分でメンテナンスしながら、後世に伝えようとご尽力されています。
感謝しても感謝しきれません・・・。
機会があれば、もう一度見学させてもらいたいなぁー。
posted by Asset Red
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