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昨日、お客様から質問がありました。
「柱の寸法は、なぜ3.5寸(105mm)角なんですか?」
「3.0寸とか4.0寸なら切りがいいのに、なんか中途半端ですよね。」
「木取りとかが関係あるとか・・・。」
どうやら構造強度がどうとか、コストがどうとかという話ではないようです。
昔からの習慣とか風習であるならば、その理由が知りたいようです。
なんとなく、うろ覚えの記憶を頼りにその場はやり過ごしましたが
心配になって、調べてみました。
あまり知られていませんが、中国から日本に伝えられた技術に規矩術があります。
簡単に言うと建築の計算技術です。
これを日本の棟梁たちは木割りと呼ばれる技術へ進化させました。
代表的な木割書だそうです。
日本は木材豊富な環境とあいまって高度な木造技術を生み出していきます。
ヨーロッパ建築にモジュールと呼ばれる規矩術がもたらされたのは20世紀になってからで、
フランスの建築家ル・コルビジェのユニテ・アヴィタシオンという集合住宅が最初といわれています。
この、ユニテ・アヴィタシオンは今日の集合住宅の原型とも言われ、
合理的な同じユニットの住宅(部屋割り)が連続する日本でいるところのマンションの原型です。
古くから木割りで計算された日本の住宅に住んでいると当たり前になっていて気がつきにくいものですが、
部屋の面積に対する天井の高さや、窓の大きさに対する窓枠の位置など(大工さんの常識)という中で
当たり前のように決められています。
室内という平面に対しての高さの比率も重要な部分で、同じ大きさの部屋でも天井の高さで広く見えたり
狭く見えたり、開放感があったり窮屈に感じるものです。
警察の取調室などはわざと天井の高さに変化をつけて不安感をかもし出す作りになっているそうです。
そもそも一畳二畳と畳のサイズによって合理的に部屋の大きさや作りがわかるのも木割りの産物です。
畳の大きさなどは関東と関西、あるいは近代住宅などで若干違いがありますが、
畳の縦横の比率は2対1ですし、木造住宅ならこの数値を四分割や六分割、
あるいは1.5倍、2倍とすることで柱の位置も、垂木の位置も簡単に割り出せます。
その昔の日本では木割りを持っている技術者を「大工」と呼び、
その下で働く技術者を「小工」と言ったそうです。
木割り技術の集大成が数寄屋造りと言われていますが、
数学者が唸るような幾何学の集大成を棟梁は刺矩(さしがね)ひとつで作り出してしまいます。
ちなみに、木割りによる室の広さと柱の太さは以下の通りです。
3.0~4.5帖・・・10.0~10.5㎝角/普通の住宅では糸面・鉋面取り
6.0~8.0帖・・・10.0~11.5㎝角
8.0~12.0帖・・・10.5~12.0㎝角
12.0~18.0帖・・・12.0~15.0㎝角/正式な座敷では大面取り(柱の太さの1/10)
茶席・・・9.0㎝/丸太柱・面皮柱を使うのが一般的
また和室の標準天井高さは以下の通りです。
4.5帖・・・2.25~2.28m
6.0帖・・・2.30~2.35m
8.0帖・・・2.40~2.50m
10.0帖・・・2.50~2.60m
12.0帖・・・2.80m
15.0帖・・・2.95m
造作材の寸法も細かく決まっています。
柱は太ければいいってもんじゃないようですね。
こちらは、木割りじゃなくて木取りの写真です。
木割りとは、関係なかったようですね。
posted by t.arai
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