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こんにちは
ホッピーレッドです。
本日は定休日の為
アセットレッドはお休みです。
みなさんは、大工さんがいつも手元に置いている
『サシガネ』をご存知でしょうか?
漢字で書くと「指矩」
「誰の差し金ですか?」
推理小説なんかで良く使われる
「差し金」ではありません。
そう、銀色に輝いている、平べったい直角に曲がった定規みたいな奴です。
小型のサシガネです。こんなのもあります。
昔は鉄製でしたが、現在はステンレス製が多いようですね。
折れ曲がった長い方が1尺6寸(約48.5㎝)ほどの長さ。
短い方は7寸5分(約22.7㎝)ほどの長さで、表と裏に目盛がふってあります。
長い方を片手で握り、短い方が右になるようにした時の目盛が「表目盛」。
反対に左に出るようにした時の目盛が「裏目盛」です。
単に表目、裏目(もしくは角目)と言うこともあります。
また、巾は1寸の半分の5分(約1.5㎝)に決まっています。
ノミで掘るような穴は大抵1寸巾が多いことから、
部材の芯墨にサシガネを当てて、芯墨の無い方に墨を引けば
芯墨から5分の線が引ける。
次に反対側にも同じようにして5分の線を引けば、2本の線が1寸の巾で平行します。
サシガネの巾が5分になっていることで、1寸の穴を簡単に掘る事が出来るわけです。
大工さんが使う色々な道具の中で、サシガネほど凄いものはありません。
寸法を測るのですから、目盛がふってあるのは当然です。
ただの定規と違うのは、計算尺も兼ねているところです。
計算尺の写真です。(計算尺を知らない方は、ご自分で調べてみてください。すいません・・・。)
奈良・平安の時代の大工が難しい三角関数や立体幾何学を知っていたわけがありません。
それでも複雑な木組みの寸法を出せたのはサシガネがあったからなのです。
サシガネなら面倒な計算なしで、紙に数字や図面を書かなくてもパッと寸法が出せます。
五重の塔もサシガネがあったからこそ、あんなにしっかりと木を組み合わせることができたんです。
わかりやすい例でいえば
「ある太さの丸太から、どんな大きさの角材が取れるか答えなさい。」という質問があったとします。
長さは丸太の長さで決まりますから問題ありません。
太さがどの位の角材が取れるかという事になります。
まず、サシガネの表目を丸太の直径を測ります。
表目の位置を指で押えながら、サシガネをくるっと裏返し、指で押えてある位置の裏目を読みます。
その目盛の寸法がこの丸太から取れる角材の、正方形の一辺の長さです。
もう少し丁寧に説明します。
次の図をご覧ください。
サシガネの長い部分の表と裏には、それぞれ違う寸法の目盛がふってあります。
図の右側が表目で、尺貫法の寸法通り1寸・2寸と目盛があります。
反対がひっくり返した面、裏目です。
裏目の1寸の巾の方が表目の1寸の巾よりも、1.4142倍長くなっています。
裏目に刻まれている1寸は表目では1寸4分1厘4毛2糸の長さに当たるわけです。
お気づきかも知れません。これって2の平方根「√2」です。
驚くことに、裏目には「ピタゴラスの定理」が活用されているのです。
つまり、サシガネの表目の目盛は直角2等辺三角形の一辺の長さが刻まれていると考えられるのです。
サシガネの便利なところは、他にもあります。
折れ曲がった短い方の裏目側には、「丸目」という目盛がふってあります。
丸目の目盛で円の直径を測ると、その数値がそのまま円周の長さになるしくみです。
ねっ、凄いでしょ
墨壺やサシガネを使い、部材に線を引いていくのは本当に高度な技術です。
この技術を「規矩術」といいます。
規矩術の規はコンパスの事。矩はサシガネの事で、「円と直角を使いこなす術」だともいえます。
2世紀頃の中国では規矩術はすでに使われていたと思われます。
これが日本に伝わったのでしょうが、中国のサシガネには裏目がありません。
平安時代末期の建物では、裏目を使わないと出来ないような加工が発見されていますから
この頃、日本で発明されたのかも知れませんね。
ちなみに丸目は江戸時代の頃、発明されたようです。(日本人、凄い)
まだまだ、サシガネには便利な機能があります。
長い方の柄の下の方にある「ホゾ穴測定目盛」は柄を握って下をホゾ穴に落すと、その深さが測れます。
裏目の横にある財・病・離・義・官・劫・害・吉という8文字も中国から伝わったものだと言われ
吉凶の判断をしたとか・・・。
語り継がれてきた伝統技術って、知れば知るほど凄まじいものですよね。
ひたすら恐れ入るとともに、感謝の一言につきます。
今回お世話になったのは、
宮大工
千年の
「手と技」
語りつぎたい、
木を生かす
日本人の知恵
松浦昭次 著
祥伝社 刊
でした。
サシガネって、直角が引ける定規じゃなかったんですね・・・。
posted by t.arai
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