閑話休題

こんにちは

ホッピー戦隊ノミタリナインジャー

隊長のホッピーレッドです。

せっかくの休日です、

たまにはこんなコラムを・・・。

大草原の様式の自由学園

少し前、久しぶりに自由学園に行ってきた。

といっても、子供の参観日とか教育視察といった教育上のことではなく、建物を目的に寄ったのだった。

近所に所用があっての帰りがけの「ちょい寄り」だから学園に事前に連絡もしていないからただその前を通って、

立ち止まりながら眺めただけだが、それでも心うたれた。さすがにフランク・ロイド・ライト大先生のデザインはちがう。

 フランク・ロイド・ライト大先生

まず敷地の設定がまるでちがう。目白駅か池袋駅から歩いてちょっとという東京の中心部に位置しながら、そんな感じがまるでしないのだ。

というと、それは昔はあの辺は畑の中だったんだからその面影が残っているだけだろう、と言う人がいるかもしれないが、

そんなことではない。もしそうなら、周囲の古い建物だって同じ印象を与えてくれるはずだが、そんなことはなくて、

自由学園だけが東京の街を感じさせない。

本当は周囲に目をやるとマンションや雑居ビルが、遠くには池袋駅周囲の高層ビルも見えるが、ひとたび自由学園に目を注ぐと、

そういう周囲の現実がフッと消えて、大草原の中にポツンと立っているように思える。

現実への抵抗力が強いというか、犯されざる固有の表現を持っているというか、とにかく印象が深い。

なぜこんなに印象が深いかというと、もちろん建物の形のせい、写真を見てほしい。中央に三角の屋根の乗るホールを置いて、

屋根の下にはタテ長に窓を開ける。三角の屋根の線とタテ長の線が立面をキューと引きしめるいい効果を与えてくれる。

そして、隅の壁の上の方は屋根との間にスキマをとる。この一見無駄なスキマがライトの天才たる所為で、

これにより建物全体の力が抜けて重苦しさが消えるのである。

さてホールを中央に配し、その左右に部屋を張り出し、さらにその両端から手前に向かって廊下が走ってくる。前庭を囲んで「コの字」の型の

平面計画となっているが、この辺のやり方が実にうまい。具体的にどこがうまいかというと、前庭の面積と建物の高さのプロポーションがうまい。

ふつうならもっと建物の高さを高くするべきところをうまく抑え、かつ屋根の形も水平性を強調するようにし、全体として建物が低く水平に広がる

ような印象を生み出している。

この水平方向の動きが、どうしても垂直方向へしか伸びていかない現代の東京の街の中で、別世界の印象を与えるのである。

自由学園の生命は水平性にあるといっても言いすぎではない。実はこれこそアメリカ生まれの建築家ライトの生命にほかならないのである。

ライトはアメリカが生んだ世界的巨匠だが、そのデザインは一貫して、「アメリカ的なもの」の追及にあった。アメリカ的なものと言っても幅は広いが

ライトが見つけたその一つが「大草原」にほかならない。北アメリカの中央部に広がる例のプレイリーである。

といってもなぜかそれがアメリカ的なのかピンと来ない人はテレビの人気番組の「大草原の小さな家」のシーンを思い出していただきたい。

インガラス一家が生きた舞台がプレーリーであり、アメリカの人々は、そこでの光景に心の安らぎを覚えるというが、そうした大草原にふさわしい

建築として天才ライトが生み出したのが「大草原様式」と呼ばれる独特の建築スタイルであり、日本のライトの作品の中では自由学園が典型例と

なっている。

わずかに百メートル四方の狭い敷地かもしれないが、

自由学園の建つ場所は大草原なのである。そう思って眺めると、確かにそんな気にもなってくるところは、さすがに天才ライトといっていい。

ライトはよく知られているように、帝国ホテルの設計のために日本にやってきた。が、初来日ではなくて、それ以前に浮世絵のバイヤーとして何回か

来ているから、日本については相当に知っていたとみていい。だから帝国ホテル設計の話がアメリカで始まった時、

内心シメシメと思ったにちがいないし、事実、彼は来日後、帝国ホテルの設計に全力を傾けている。しかし朝から晩まで帝国ホテルにかかわってきた

わけではなくて、その業余にいくつかの小品を手掛けている。その一つが自由学園であった。

彼は自由学園の教育に興味があったらしく、同学園の昔の卒業生と話をしていたら、「子供の頃、自由学園の図画の授業の時、ライトさんが教室に

入ってきて、教えてくれたのを覚えています。といっても何を教えてくれたのか忘れましたが・・・」と昔話をしてくれました。

この建物はライトだけでなく、日本人の愛弟子の遠藤新も加わっているから、昔は遠藤新の設計と思われていたこともあるが、現在はライトが

基本設計をやったことが資料により確かめられている。

本当にライトが手掛けたかどうかというのは大切なことで、日本に本当にライトの作品があるというのは普通の人が思っているよりずーと意味のある

ことである。なぜなら、ライトの作品というのは北アメリカ以外では日本にしか建っていないからだ。

現在日本には自由学園を含めて四件のライト作品が残っているが、このことを日本の人はもっと誇りにしていいと思う。

さて自由学園の表現上のことはこれくらいにして最後に技術について触れておこう。

ライトは表現の天才であったが、こと構造技術については天才とはいえなかった。凡才といっては失礼だが、けっこう無理なことをやっていて

それが今の関係者を悩ましている。

自由学園の構造は一見すると石か煉瓦かコンクリートみたいだが、実は木造で、木の骨組の上に壁を塗って仕上げている。そのことに問題は

ないのだが、問題はその骨組にある。相当に無理があるのである。

たとえば、屋根が斜めにかかっているが、この屋根には天井裏というのはないから、天井も同じように斜めになっている。

屋根の構造は板が山形に差掛けてあるのと同じで、その結果、山形の二枚の板は左右に開こうとする。つまり屋根を受けている側壁に内側から

外に向かって水平力がかかることになるのだが、しかし、それを受け止めるだけの強さが壁にはない。

このことは自由学園の関係者が頭を痛めている点だが、しかし、これまで半世紀以上も無事に来たのだから、基本的には修理すれば大丈夫だと

思う。

とにかく今の場所でミニ大草原をやりつづけてほしいというのが僕の願いだ。

 

完本・建築探偵日記

東京おんりい。いえすたでい

藤森照信 著/王国社 刊(1999年の本です・・・)から抜粋しました。

ライト好きの私ですが、実は日本の建物は全く目にしていません。

いづれ、訪ねてみたいとは思っているのですが・・・。

現存している建物は4つみたいですね。

林愛作邸(一部現存)

山邑太左衛門別邸/現 ヨドコウ迎賓館(現存)

帝国ホテル/明治村(一部移築)

そして、先述の自由学園という事です。

随分とむかし、アメリカ東海岸へ旅行に行った際

フランク・ロイド・ライト/バスツアーに参加したことがあります。

自宅(スタジオ)

オークパーク内のいくつかの建物

ジマーマン邸

ロビー邸

一日掛りでバスに揺られていましたが、楽しい思い出です。

どれも木造とは思えない、構造的には無理な造りでしたが

表現方法は素晴らしく、感動しまくりだったことを覚えています。

いつかは、こんな家を作ってみたい・・・。

もちろん、高断熱・高気密の家で・・・。

かなり難しいと思いますが・・・。

 

 

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  posted by t.arai 

 

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