医学と建築学が明らかにした住宅の断熱性能と健康との関連 4

前回に引き続き、堅苦しい話をお届けします。

今回は、死亡原因と死亡場所お話です。(辛気臭い話で申し訳ありません)

我が国は世界一の長寿国となりましたが、医療費は36兆円弱(2009年)にも上っており、その後年々1兆円規模で増え続けています。

上の表は、日本公衆衛生学会による「気象条件・死亡場所が死亡原因に与える影響」という調査結果です。死亡原因の月別死亡数を場所別に比較すると、病院医療の進歩した現在では自宅よりも病院での死亡の方が高くなっています。

死亡原因の比較では、新生物(主にガン)には寒暖や時間などの法則性が無く、年間を通して変化はありません。

その他の心疾患や脳血管疾患、溺死・溺水は10月から増え始め1月をピークにとして、冬期間の死亡率が高くなっています。逆に死亡率の減少は、6~8月の夏季に集中しています。

要約すると、心疾患・脳血管疾患・溺死・溺水は温度が低い冬季に死亡率が高くなり、温度の高い夏季に少なくなることが分かります。しかしよく見ると、病院での死亡率は低下していますが自宅での死亡率が減っている訳ではありません。これは病院と自宅の夏の室内温度の管理が影響していると思われます。ヒートショックも問題ですが、暑さを我慢する事も疾患を悪化させているのです。

このデーターで特に注目して戴きたいのが溺死・溺水で、病院の死亡率よりも自宅での死亡率が圧倒的に高く、しかも冬季の死亡率が夏季とは比べようがないほど高率な事です。

自宅での死亡率が高くなる原因は、入浴時の室内温度差(ヒートショック)にあると考えられています。

入浴時に寒い脱衣所で脱衣し風呂場に入った時点でヒートショックを起こします。風呂の中で転倒して溺死・溺水に繋がっているケースが考えられます。

心疾患・脳血管疾患・溺死・溺水の死亡率を軽減させる為には、ヒートショックを起こさせない温熱環境が重要になります。

足を滑らせるなど加齢による単純な原因も考えられますが、夏季と冬季の極端な死亡率の差から類推できる事は、暖房室と浴室・トイレ・廊下などとの極端な温度差です。健康を維持する為には温度差の少ない住環境が必要である事がわかります。

次回は、温熱環境と脳血管疾患の関係というお話です。

引き続きお付き合いいただけますよう、よろしくお願いします。

 

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