医学と建築学が明らかにした住宅の断熱性能と健康との関連 20

毎回毎回、堅苦しい話をお届けしています。

 今回は、断熱性能が体感温度を暖めるというお話です。

上図のように同じ室温20度の住宅でも、断熱性能が高い住宅とそうでない住宅では、体感温度(実際に身体で感じる温度)が全く異なります。

断熱性能が低い住宅では、暖房しても暖房温度は外気に影響された壁や窓などの温度に吸収され、逆に冷たい輻射熱を感じて20度という室温よりも遥かに低い温度に感じてしまいます。

これを冷輻射現象と言います。

逆に床や壁・開口部周辺を高断熱・高気密にすると、外気の影響を受けにくくなり壁や窓の表面温度が高くなって、壁や窓に近づいても冷輻射が起こらず、熱を奪われる事が無いので寒さを感じません。

断熱性能の良い床や壁は、表面温度や足下付近の温度低下を抑えて体感温度を高めます。

体感温度が高いと暖房に縛られる必要がなくなるので、室内での動きが楽になり自然に運動量も増えていきます。

上図中の体感温度の計算式で、居住空間における体感温度を計算で求める事ができます。

体感温度が18~20度程度あり、全室暖房が実現出来ていれば室温低下による不快感を感じる事はありません。

この場合室温はそれほど高くありませんから、暖房温度を高くする必要もありません。

暖房の必要温度は住宅の性能によって変わります。冷輻射を感じる住宅では必然的に高温暖房が必要となります。開放型の石油ストーブや石炭ストーブ・薪ストーブは800度もの表面温度を必要としましたが、高断熱住宅の全室暖房に採用される蓄熱ストーブや温水暖房は60度以下で十分家全体を暖めてくれます。

このような低温で暖房する器具を断熱性能の悪い住宅で使用しても、暖房効果は全く期待出来ません。

高断熱住宅で使用出来る暖房装置は、ほとんどの場合火災の心配も少なくなっています。

近年では寒冷地用のヒートポンプも一般化し、寒冷地においてもエアコンによる高効率な暖房が可能になっています。

高断熱住宅の壁や窓の表面温度の上昇は、副次的な効果としてカビの発生を抑え健康的な住環境を創る為にも貢献できます。

次回は、断熱性能と子供の風邪予防というお話です。

いよいよ、最終回となります。

引き続きお付き合いいただけますよう、よろしくお願いします。 

 

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  posted by t.arai 

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