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季節はずれのお話で申し訳ありません。
どちらかと言うと冬にピンとくる内容です。
少しの間だけ、お付き合いください。
最近『蓄熱』と言うキーワードを耳にする機会が増えています。
既に住宅性能の基本となる断熱・気密について十分に習熟したパイオニア達が、次なるブレークスルーとしてコレに目を向けているようです。
熱収支の矛盾を一挙に解決してくれる魔法のように語られる事もある『蓄熱』。
ホントの所はどうなんでしょうか?。
住宅の熱パランスを『家計』に例えてみました。
下図をご覧ください。
日射などの熱取得が『収入』ならば、壁や窓から漏れて出ていってしまう熱損失は『支出』になります。
収入<支出(赤字)になれば、やむなく借金をして穴埋めをする事になります。
放置すれば、その先には『破産』が待っています。
熱の収支も同じです。ほとんどの家は収入<支出になっていて、日本国並みに『大赤字』なので膨大な化石エネルギーで穴埋めせざるを得ません。
この燃料が家計や貿易収支を圧迫し、排出されるCо2が地球環境を悪化させているのはご存知の通りです。
では家計がピンチになったら、その健全化の為に何から手をつけるのが良いか想像してください。
ほとんどの人は真っ先に、即効性のある『支出の削減』に取り組むはずです。
食費や交際費・保険などの支出を精査し、不必要なモノから順に歳出カットをするのが当然です。
住宅で言えば断熱とはまさに家からの余計な熱損失をバッサリ削減する大ナタに他なりません。
断熱・気密は熱の制御に不可欠なので、まずはコストの許す限りしっかりと行う事が前提になります。
歳出カット後、今度は収入増加を図ります。
幸い日本の多くの地域では冬季でも日射が豊富です。
最近登場してきた高性能サッシを活用すれば、断熱しつつ大きな日射取得が見込めます。
こうして支出(熱損失)と収入(熱取得)をバランス良くする事が出来れば、外からわざわざ借金(化石エネルギー熱)を投入しなくても快適に暮らす事が可能です。
まさに『熱財政の健全化』が達成出来るのです。
暖房の消費エネルギー低減の為には、熱取得と熱損失の『プライマリーバランス』を確立する事がなによりも重要です。家計や国の財政と全く同じなのです。
蓄熱は、熱収支の家計において『財布』的存在です。余ったお金は貯めておいて(吸熱)、後で取り出す(放熱)のです。
蓄熱は、熱収支の矛盾を一挙に解決してくれる魔法ではありません。
家計がピンチになった時、財布だけを大きくしたところで役に立ちません。
熱収支の改善には、熱取得と熱損失のプライマリーバランスの確立が大前提なのです。
それでは蓄熱が役に立つのはどんなシチュエーションでしょうか。
それは熱が『余る時』と『足りない時』が交互に発生する場合です。
つまり熱取得と熱損失が1日全体ではバランスが取れていても、時々刻々の中ではプラスとマイナスが発生する状態です。
住宅の熱容量が小さいと窓からの日射熱を躯体が吸収しきれない為、余分な熱が室内に溢れて熱のバブル経済『オーバーヒート』が発生します。
こうなると冬でも暑すぎます。窓を開けてせっせと熱を捨てなければなりません。
そして夕方になると、バブルは崩壊し室温は急低下。『氷河期』に突入します。
凍える夜に「あの昼間の熱があれば・・・。」と後悔しても既にこと遅し・・・。
やむなく暖房のスイッチを入れるしかありません。
このように蓄熱が足りないと、せっかく断熱と日射取得を工夫して熱のプライマリーバランスを確保しても、快適でも省エネでもありません。
ここからが蓄熱の出番です。
適切な蓄熱容量を室内に付加すれば、日中の過剰な熱を速やかに吸収してオーバーヒートを防ぎ、夜間には熱を放出させて氷河期を乗り切る事が出来ます。
高断熱・高気密な建物に高性能サッシによる日射取得。そこに蓄熱技術を組み合わせる事で、化石エネルギーに頼らずに快適な温熱環境を作り上げる事が可能です。
潜熱蓄熱の出来る、内装壁材も発売されています。
こうした建材を有効に活用して、省エネ・快適な生活をエンジョイしたいものです。
住宅雑誌「Replan北海道」104号より加筆・修正させていただきました。
東京大学 前准教授の面白くて為になるお話でした。
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posted by Assed Red
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