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『住宅燃費』と低燃費な家についてのお話をシリーズでお伝えしています。
第3回目は『省エネ基準の改正』です。
少し前の事です。(既にご存知の方も多いと思われますが、そうした方々はおさらいと思ってください。)
平成25年10月1日、新しい住宅向け省エネルギー基準(H25基準)が施工されました。
14年ぶりの大改正となった今回は、住宅の断熱性能の基準の他に一次エネルギー消費量の基準が新たに設けられました。
また、断熱性能の基準がQ値(熱損失係数)からU値(外皮平均熱貫流率)に変わりました。
さらに家庭で消費される全てのエネルギー消費量の合計が基準の対象となりました。
電気や灯油・ガス等の家庭で使われるエネルギーの事を二次エネルギーと言います。
家庭で消費されるエネルギーの元となっているのが、化石燃料や原子力・水力などの自然から得られるエネルギーであり、これを一次エネルギーと言います。一次エネルギーを変換・加工して得られるエネルギーが2次エネルギーになります。
建築物では二次エネルギーが多く使用されており、それぞれ異なる計量単位(kwh・L・MJ等)で表示されますが、新しい省エネ基準では、これを一次エネルギーで表示します。
一次エネルギーは『J(ジュール)』という単位で表し、それぞれの計量単位は以下のように換算する事が出来ます。
電気:1kwh=3.6MJ
プロパンガス:1m3=99MJ
灯油:1L=37MJ
ちなみに
1MJ(メガジュール)=1,000,000J
1GJ(ギガジュール)=1,000,000,000J
となっています。
また住宅の一次エネルギー消費量は、H25基準で指定されている『一次エネルギー消費量算定用WEBプログラム(住宅用)』を使用して計算および評価します。
その評価は、H25基準で建てられた家よりも一次エネルギー消費量の少ないかどうかで行われます。
H25基準を上回れば☆
H25基準相当であれば☆☆
H25基準の90パーセント以下であれば☆☆☆と表示され、省エネ度の目安とする取組になっています。
☆☆☆が省エネ住宅の最低基準と言っても良いでしょう。
この4月から住宅版『BELS』制度もスタートしました。
こちらも住宅の燃費性能を評価・表示する制度です。
ここでは☆☆☆の上にさらに2ランク設定が出来ました。
H25基準-15パーセントは☆☆☆☆
H25基準-20パーセントは☆☆☆☆☆となります。
ちなみに、☆☆☆☆☆かつUA値が0.6(6地域の場合)以下で、自然エネルギー利用により一次エネルギー消費量(その他・家電等を除く)を0以下にする事が出来る住宅は『ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)』と呼ばれるようになっています。
ちなみに上にあるラベルは、弊社設計施工の『FPの家 Y邸』のものです。
☆の数やU値、一次エネルギー消費量等が表示されています。
こうしたラベリングが推進され、世の当たり前になった時、建物の価値は従来の判断基準と大きくかけ離れたものになるでしょう。
住宅性能に関わらず、築年数のみで決定していた従来の評価はもはや通用しません。
何故なら、高性能住宅の耐用年数はそうで無い住宅を遥かに上回り、その価値は下がりにくくなるからです。
性能の高い家(燃費の良い家)は不動産価格が上がり、そうで無い家は二束三文の価値にしかなりません。
当然税金や保険料等にも反映される事になるでしょう。(もちろん、価値の無い家は税金や保険が高くなります。)
こうした時代が早く来る事を切に願う今日この頃です・・・。
H25基準は2020年には、これまでの『努力目標』から『義務』に変わります。
この基準で建てられた住宅は、決して性能が高い訳ではありません。
それでもようやく、2020年になって全ての住宅が最低限の省エネ基準を満たす事になる訳です。
えっ!今建てられている住宅はH25基準で建てられてるんじゃないの?
残念ながら、そうとも限りません。次のデーターを見てください。
4年前のデーターになります。残念ながらH25基準の家はここには出てきません。
でも、平成11年基準の家とH25基準の家の求められる断熱性能はほぼ同じですから参考にはなると思います。
これを見ると住宅ストック約5000万戸のうち、現行基準を満たしている家はわずか250万戸足らずしかありません。
平成11年から平成21年までの10年間の累計着工棟数は、上表によると約11,47万戸にもなります。
その全てがH11年基準に適合する家であれば、250万戸を遥かに上回るはずですよね。
いかに適合した住宅が建てられていないかがわかります。残念で仕方ありません・・・。
住宅を建てる上で住宅燃費の表示は大きな目安になります。
でも、実際にエネルギー消費量を決定する要素を知った上で比較・検討すれば、より省エネな住宅を手に入れる事も可能です。
家庭のエネルギー消費量を決める要素は、上図に挙げられるものになります。
家づくりを考える時は、
躯体性能(外皮性能+省エネ間取り+換気計画)
自然エネルギー利用(採涼・日射取得を含む)
効率的な設備
そして、暮らし方の工夫が必要となります。
スマート住宅のような『高効率設備(太陽光発電を含む)に頼った家づくり』は、健康・快適な暮らしの為の省エネ住宅とは言えません。
どうか、ご注意ください。
今回はここまでとします。
次回は『省エネのメリット』をお届けします。
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posted by Hoppy Red
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