低燃費な家8

『住宅燃費』と低燃費な家についてのお話をシリーズでお伝えしています。

第8回目は『住宅燃費を良くする為に必要な事』です。

家を建てる時には断熱材をしっかりと納める精度が重要です。

また蓄熱をする内装下地材との間に空隙を設けない施工や、家の隙間を作らない気密施工も必要になります。

断熱施工の全てが現場で行われる場合、職人の腕によりその精度にバラツキが出る事もあります。

完成すると見えなくなる壁の中だからこそ、間違いは未然に防ぎたいものです。

FPの家で使われる断熱材(FP壁パネル)は木枠付硬質ウレタンフォームです。

現場の寸法に合わせて1ミリ単位の精度で加工された物が、1枚1枚丁寧に納められます。

また、壁厚さに合わせて105ミリ・120ミリ(真壁用75ミリ)の3タイプから選ぶ事が可能です。

内装下地材と断熱材の間に空隙が出来る事がありませんから、上昇気流による熱移動も無く、石膏ボードの蓄熱効果を高める事が出来るのもさの特長のひとつと言えます。

以下、簡単に説明します。

上イラストは断熱材の配置と断熱の関係を示したものです。

どちらも断熱材はグラスウールを使用しています。

上段は断熱材と外壁合板の間に空気層が連続しています。

また、石膏ボードと断熱材の間に気密・防湿シートの施工を行っていません。

下段は断熱材が壁の中いっぱいに入れられており、空気層は見当たりません。

また、石膏ボードと断熱材の間に気密・防湿シートの施工が行われています。

グラスウール等の繊維系断熱材は、その繊維中に含まれる動かない空気が暖かい空気を保持する事で断熱効果を発揮する事が出来ます。

発砲プラスチック系断熱材の場合は、この空気がさらに熱伝導率の低い『不活性ガス』である為に高い断熱性を持っている訳です。

上段のような施工では、外壁側にある連続する空気層に常時上昇気流が発生する事になります。

この時、断熱材に含まれる暖められた空気は気圧差で空気層に移動します。

空気が動いてしまったら、もはや断熱材ではありません。

石膏ボードの熱は断熱材を透過して連続する空気層から上部に逃げてしまい、石膏ボートは冷たくなります。

また、気密・防湿シートの施工が行われていませんから、空気と一諸に侵入した湿気は断熱材を濡らしてしまいます。

一旦湿った繊維系断熱材はなかなか乾きません。(吸湿性が高く、放湿性が低いのが繊維系断熱材の弱点です)

放湿性が高いと言われるセルロースファイバーも含め、こうした断熱材は濡れている状態では断熱性は期待出来ません。

下段のような施工は、連続する空気層と断熱材の間に防風層(合板)がある為、空気が動く事もありません。

暖かい空気は断熱材に保持される事になります。

気密・防湿シートも施工されているので、湿気対策もバッチリです。

でも気になる事があります。

市販されている断熱材の厚さは100ミリです。105ミリの壁厚さであれば5ミリの空隙が出来てしまいます。

「5ミリなんてたいした事ないよ。」と言う方がいるかも知れません。

でも、上下の温度差あれば上昇気流を妨げる事はありません。

断熱材と外壁合板の間にこの空気層があればまだましかも知れません。

でも、もし石膏ボード側にあったとしたら・・・。

石膏ボードの蓄熱効果は大きく損なわれる事になってしまいます。

気密シートの施工精度も問題です。

丁寧な気密施工が行われている家=気密性能の高い家=隙間の無い家となります。

一昔前の家の隙間はどの位あったと思いますか?

実質床面積100m2の家の隙間は約ハガキ10枚分になると言います。スカスカ住宅です。

最近の気密性の高い家の隙間はハガキ2枚分という事ですから、その違いは歴然です。

その精度を確認する為にも『気密測定』が必要となります。

 

空気を強制的に外に排出し、室内に侵入する空気量を測定します。

その空気量から外皮全体の総隙間面積を表示し、実質床面積で除した値『隙間相当面積(C値)』を算出します。

このC値の大きさで、気密処理の良し悪しが判断出来る訳です。

北海道における最近の気密住宅(48戸)のC値を測定した結果を示しました。

これを見ると、平均1.3~2.3と各工法により平均値がバラバラである事がわかります。

RC造のC値は大体0.6位と言われていますから、いずれにしても随分と隙間が多いですよね。

隙間の多い家(C値6.0)と少ない家(C値1.0)の年間暖房費を比較したグラフです。

隙間から熱が逃げてしまう(漏気が多い)家に比べて、隙間の少ない家がいかに省エネかがわかります。

FPの家の気密施工の一部を示しました。

硬質ウレタンフォームに圧力をかけて製作したFP壁パネルは、空気や湿気を通しにくい素材です。

その継ぎ目をアルミテープで丁寧に塞ぐ事で、気密施工が行えます。

上のグラフを見ると、気密測定が義務付けられているFPの家が、いかに隙間の少ない家である事がわかります。

室内の汚れた空気を排除し新鮮空気を供給する計画換気は、健康で快適な暮らしの為にも欠かせません。

必要換気量を澱みなく流れるようにする為にも、無用な隙間があってはなりません。

C値が5.0の家と0.5の家の給気口からの給気量を比較したデーターです。

隙間が多い家では、全体給気の83パーセントは家の隙間から入っています。給気口からの空気は17パーセントに過ぎません。

隙間の小さい家でも、34パーセントは家の隙間から入っている事になります。

まさに驚きのデーターです。

このデーターによれば、隙間が大きい家では有効な換気を行う事が出来ない事になります。

隙間がいかに省エネに影響を与えるか、お分かりいただけたかと思います。

最近給気と排気の間で熱交換を行う換気システムの話を良く聞きますが、そもそも給気口以外からの給気が多ければ何の意味もありません。

熱交換の有無に関わらずC値0.5以下の気密性能は必要性能と言えそうです。

水が漏れているバケツがあります。

バケツの水を常に満たそうとすれば、穴の大小により必要水量は大きく異なります。

この場合のバケツは住宅。穴は隙間。水は適度にコントロールされた温度となります。

ジャンジャン熱が逃げる家で、バンバン暖房を焚く事がいかに非効率であるかお分かりでしょうか?

こんな状態の家で、住宅燃費を計算しても意味がありません。

今回はここまでとします。

次回も引き続き『住宅燃費を良くする為に必要な事』をお届けします。

  

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  posted by Assed Red

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