雨ですね。

今日と明日は定休日です。

屋根を叩く雨音で目が覚めました。

雨ですね。

憂鬱・・・。

天気予報でわかってはいました。

現場を預かる者の性でしょうか?

梅雨なんて大嫌いです。

気分を変えて、こんな話はいかがでしょうか?

我が家の屋根は陶器瓦です。

暖色系の洋瓦を3種類、混ぜて葺いています。いわゆる混ぜ葺きといわれる葺き方です。

瓦屋根・トタン屋根、屋根にも色々あります。

玄昌石や銅、ステンレス、最近ではそれらを模した工業製品もたくさん出ています。

昔は建築材料として、身の回りに大量にある安価なものを使うのが当たり前でした。

ですから「アシ」や「ススキ」で葺いた草葺き、「カヤ」で葺いた茅葺。

「檜の皮」で葺いた檜皮葺、「杉の皮」で葺いた杉皮葺きなんてものまでありました。

 

写真左が茅葺き、右が草葺き

 

写真左が桧皮葺き、右が過ぎ板葺きです。

「こけら」という言葉をご存知でしょうか?

漢字では、「杮」と書きます。

武家屋敷や昔の民家の屋根や塀などには、薄く割った板で葺いたものがありました。

今でも神社などの古い建物には、この薄い板で葺いたものがあります。

この薄い板を杮板といい、これで葺かれた屋根を「杮板葺き」といいます。

これが杮板葺き、写真ではそれぞれの違いがよくわかりませんね。

薄い板が重なり合い、微妙なやわらかさを持った美しい屋根だと思います。

それなのに近頃は、瓦屋根やトタン屋根・コロニアル屋根ばかり・・・。

火に弱い茅葺・杉皮葺きや、手間のかかる桧皮葺き・杮板葺きはその姿を消しつつあります。

桧皮葺きや杮板葺きは、今では文化財の建物ぐらいにしか見られなくなりました。

昭和30年代までは、学校・公民館などの大きな建物にも「こけら」は使われていました。

それほど身近で安いものだったのです。

こけらの材料には檜やサワラなども使いますが、主な木は杉と栗です。

秋田県の杮板葺き屋根は、原則的に8寸(約24cm)の長さに切った丸太を鉈と木槌でミカンを割るように順に割っていくものでした。

 

丸太に鉈の刃を当てトントンと木槌で叩くと、板は簡単に割れます。

杉や檜や栗は柾目の方向に素直に割れる性質を持っているのです。

この事を知って、こけら材に選んだのでしょう。

仕上げは「セン」という道具を使います。

こけらは縦が8寸で、幅は割る木の大きさや場所によってまちまちです。

厚さは1分5厘(約4.5mm)で重ね合わせた時に膨らまないように、お尻を薄く削いであります。

この薄い板を何枚も屋根に重ねて釘で留めていくのです。

屋根を葺くには大変な数のこけらがいります。ですから簡単に割れる木が大量になくてはなりません。

さいわい日本にはたくさんの杉の天然林がありました。

良い部分は建材として使い、伐り残された伐根などをこけらに使ったのです。

かつては日本の山には栗の木も大量にありましたし、実が採れる事から庭や屋敷に植えられてもいました。

そうした木を屋根替えのたびに割って使ったのです。

こうした木は年輪が詰まっていて、水を通しにくく、素直でまっすぐに割れる性質を持っていたので、こけらに向いていました。

私もこけら板を作った事があります。

鉈と木槌を使うと、面白いように杉板が木目に沿って割れていきました。

センを使って厚さを揃える訳ですが、綺麗な柾目であれば板厚は割と揃っていて、感心した記憶が残っています。

先人が行ってきた、木の良さを建物に活かすさまざまな工夫。

大したものだと思いませんか?

でも私達はそれを活かそうとはしていない気がします。

工業技術の発達と共に、忘れられてきた伝統技術。

残していきたいと思うのはみんな同じだと思うのですが・・・。

  

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