無垢材信仰 7

 

学芸出版社 刊

佐道健 著

木がわかる~知っておきたい木材の知識

から抜粋した記事を7回に分けてご紹介してます。

第7目はエンジニアウッドとは?いう話です。

最近よく使われている建築材料の中に、エンジニアウッド(EW)というものがあります。

これは工学的な手法で、耐力性能が計算・評価・保証された木質材料です。

特徴として、耐力性能がはっきりしていて材料としての信頼性が高い事が挙げられます。

無垢材を始めとして従来の木質材料は、強度やヤング係数などの耐力性能がはっきりせず構造材料として使う場合に構造計算の根拠となるものがありませんでした。その為最も弱い材料に当たったとしても安全なように設計する必要があり、無駄な使い方を強いられていました。

EWは耐力性能が数値で示されている為、このような事はありません。

その種類は種々ありますが、代表的なものはグレーディングマシンで等級区分された製材(MSR材)・構造用集成材・構造用LVL・OSB・OSL・LVLとOSBを組み合わせてI型断面の梁としたIビームなどがあります。

このように注目されるようになったのは、建築基準法の改正で今までの仕様規定で設計していた木造建築に代わって、構造計算に対応できる性能規定で設計出来るようになったからです。その結果として要求される耐力性能を満足させる木質材料が必要となりました。

もちろん、それ以前から構造用集成材や構造用合板はありましたが、EWとして考えられるようになったのはつい最近の事なのです。

EWのメリットはあくまでも強度を保証するものであり、他の木質材料の一般的特徴と同一視してはなりません。またいくつかの誤解があるのも事実です。

例えば、「工業的に製造された木質材料である」というのは誤解です。

EWの多くは工業的に生産されたものではありますが、MSR製材のように製材工場で生産されていても通常は工業的に生産されたものとは言いません。また造作用の集成材や合板、パーティクルボード・MDFは工業的に生産されていてもEWではありません。

少しややこしい話になりますが、木質材料の特徴として狂いが少ない事が挙げられます。

その製造にあたり、木質材料を複合した結果として狂いが少なくなったとしても、それが必ずしもEWの特徴ではないのです。

また耐力性能の改良があったとしても、それはあくまでも表示されている強度が保証されているという事であり、無垢材よりも強くなるという事ではありません。

確かに同じ原料丸太から製造した集成材の強度のばらつきは、単に製材しただけのものよりも少なく、下限強度は高くなります。しかし製材であっても強度等級区分した材料であれば強度のばらつきは少なくなり、下限強度も高くなります。

性は基本的に一般の無垢材や木質材料と変わりありません。原料となる木質エレメントの耐朽性がそのまま製品の耐朽性となります。構造用の複合木質材料は耐水性が高い接着剤を使いますが、これは接着層の耐性を高める上で効果的なのであって、エリメントが腐朽し使用に耐えなくなる事もあるので注意する必要があります。

木材は無欠点材であっても強度・ヤング係数の散らばりが多い材料です。その上実用に供される部材では、節や目切れなどの欠点を避ける事はできません。

例えばヒノキ材であっても、ひとつひとつの材料強さには相当の違いがあります。最も強いものは最も弱いものの2倍以上の強さになる事もあります。

ですから今までは、先述のように一番弱い材料に当たったとしても安全なように設計をしていた訳です。極めて不経済ですよね。

だからこそ、材料の品質を揃え強度・ヤング係数のばらつきを少なくする必要があるのです。そのための手段としては以下の2つの方法があります。

1.ストレスグレーディング

何らかの方法で非破壊的に強度を含め材質を推定し、強度・材質による木材の分別・区分する方法。

グレーディングマシンを使う事が多く、マシンには製材にわずかな曲げ荷重を加えてたわみを測定するタイプと、製材の一端の木口面を打撃し他端で伝搬する音の周波数を測定するタイプの2つがあります。

いずれも寸法・重量を同時に測定してコンピューターでヤング率を算出し、マーカーでその値やヤング率に対応したグレードを印字します。この方法でグレーディングした製材をMSR材と言います。

2.

原料である木材を一旦小さいエレメントに分け、接着剤複合し、欠点を分散させたりして材質を均等にする方法。

工程の中でエレメントの大きさや形によって、出来上がった製品の性能などが左右されます。これらの製品は品質の安定した信頼性の高い材料を得ると同時に、木材が持っていない新しい性能を持つものも多いというメリットがあります。

このようにして出来る木質材料に使用されている主なエレメントは、大きいものから順に挙げると以下のようになります。

挽板や小角材

単板

パーティクル(削片)

ファイバー(繊維)

エレメントが大きいほど木材が持っているテクスチャーや配向性(1つの方向に高い性能をもつ性質)、耐力性・断熱性といった特徴を受け継ぎます。逆にエレメントが小さくなればなるほど、品質の散らばりが小さくなるうえ、種々の比重のものが得られるため、異なる音や熱などを遮る性能が得られる一方、木材が持つ特性を受け継ぐ事は少なくなります。

壊れにくいものを作りたい。

この時、材料を選ぶ段階で壊れにくさや安全性といった事が重要視されます。

普通、信頼性とは通常に使用する条件のもとで規定の期間中に要求された機能を果たす事が出来る性質です。

似たような言葉ではありますが、安全性とは使う事やこれが壊れる事によって人体や財産に損害が与えられない事を確保する事に重点が置かれます。

本来、ある材料の強さや耐久性は壊れるまで負荷したり、時間をかけたりしなければわかりません。もちろん壊してしまえば使えなくなるわけで、ここに矛盾が生じます。ですから腐朽や虫害のような生物による劣化は別にして、主に次の2つの方法で壊れにくさを推定しています。

1.危険や損傷を及ぼす荷重が材料の耐力の限界以上になる確率をはっきりさせる。

個々の部材や接合部の強さは一定ではありません。強いものもあれば弱いものもあります。一方これに作用する荷重も一定ではなく、ばらつきがあり時にはかなり大きな力が作用する事もあります。部材の破損はこのばらつきが重なっている部分、すなわちたまたま弱い材料に大きい荷重がが作用した時に生じます。従って重なりの部分が大きいほど破損の確率が高くなり壊れやすくなります。

この事から安全性を高める為には強度の平均値を高めるとともに、その変動を小さくする必要があります。強度の変動が小さい時には、例え平均値が多少低くなってもある荷重下で破壊する確率が下がり、安全性が高くなります。

木材の様に強度に変動が大きい材料は、ストレスグレーディングによって平均値が異なるグレードを区分し、これに加えて部材の変動を小さくする事で部材としての信頼性を高める事が出来ます。また集成材やLVLとする事によっても部材の耐力性能の変動が小さくなり、部材としての信頼度を上げる事が出来ます。

2.材料は時間とともに劣化するので、許容できる強度まで材料が劣化するまでの期間を推定する。

劣化という事象は、反応速度論という物理化学的理論に基づいて進行すると考えられます。加水分解・木材や接着剤の劣化のような化学反応・クリープ変形・浸透や拡散のような物質移動などがこれに当たります。これらは普通、温度が上がったり水分が付加される事によって進行の速度が大きくなります。

一般に材料の耐久性を判定する試験は、たとえば30年間の寿命を保証するためには本来30年間の試験が必要と考えねのが普通です。でも現実にはこのような長期間に渡る試験は出来ないので、反応速度論的な理論を根拠に短時間の促進試験や他の間接的な試験の結果から耐久性を予測します。そのため、通常使用条件では考えられないような過酷な条件の下で試験する事も多くなります。

例えば合板や木質ボードのように接着剤を使って複合した材料に対して煮沸試験を課す事があります。実際にこのような材料を熱湯の中で使う事はありませんが、「これだけ厳しい条件に耐えたのだから、少々の雨露に曝されても大丈夫だろう」という安心感で試験結果を受け止めている人が少なくないと思われます。

このようにして個々の材料の信頼性がわかったとして、どのようにしてその品質が保証できるのでしょうか。

消費者が製品を手に入れる時、『どのようなものなのか正しいのか』という認識が必要で、これで消費者は『求めているものかどうか』の判断をします。この判断を助けるための『製品に付けて提供する情報』が品質表示になります。

品質表示を適正なものにして、消費者の利益を保護するためには公的な規制が必要となります。

日本農林規格(JAS)や日本工業規格(JIS)が代表的なものですが、国際的にはISO(国際標準化機構)があります。JASとJISはそれぞれ農林物資と鉱工業製品の品質表示を適正に行い、取引の公正と消費者保護を図るために法律で定められたものである。これらの規格には対象となる物資や製品の等級・形状・寸法・構造・信頼性と安全性を含む性質・性能のほか、品質の試験・検査法などが定められています。いずれも規格に適合していると認められたものには、JASやJISのマークをつけて供給する事が出来ます。両者の性格には多少の違いがありますが、基本的には対象となる物資・製品を管轄する省庁の違いと考えて良いでしょう。

この他木質建材を対象としたAQ認証制度もあります。この制度は新しい木質建材などが出た場合に、その品質・性能などを客観的に評価・認証し、消費者に対して安全性・居住性に優れた木質建材などの供給の確保を図り、合わせて製造業者の新技術や新製品の開発を促進する事によって、木材の利用推進も図っています。対象となるものは製材・集成材・合板・木質パネルなどであり、JASの基準を上回る製品も認証の対象になっています。認証を受けた製品にはAQマークを表示する事が出来ます。

実際の製品の安全性と信頼性については、部材の材質そのものの安全性と信頼性だけでなく、個々の部材の寸法と形状、製品の中での部材の配置、特に木材では適切な接合部の設計が必要となります。ここで信頼性を確保する為には設計段階で考えられる障害の原因となるものをどれだけ取り除く事が出来るかにかかっています。特に高い信頼度が要求される部分では、障害が発生してもこれに代替する処置が取れ、継続して機能を果たす事が出来るようにしておくことも必要でしょう。

また規格などの名称・内容は時によって改定される事がありますから、最新の情報を確認する事をお勧めします。

今回で終了です。固い話ばかりが続きました。

しばらく経って機会がありましたら接着剤の話も書きたいと思いますので、その節はよろしくお願い致します。

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