セルロースファイバーと調湿性

 
今日は日曜日、しかも生憎の天気です。
現場ネタも特にありません。
先日参加したセミナーで紹介された、『セルロースファイバー』についてお話をしたいと思います。
 
FPの家しか建てない弊社が使う断熱材は『FPウレタンパネル』だけ。
と思っている方が多いと思います。
でも、そんな事ないんです。
例えば浴室や玄関土間は『基礎断熱』となるため、FPウレタンパネルは使いません。
イソシアヌレートフォームの成型板を切って、土間部分と立上り部分に貼り、断熱層とします。
また、天井断熱の場合はセルロースファイバーを天井板の上に吹き込みます。
 
セルロースファイバーの特徴は以前も書いた事がありますので
今回は『OK-DEPOT』の『EMセルロースファイバー』の特徴の中でも、調湿性(吸放湿性)に関する部分のカタログ記載を抜粋してご紹介します。
 
湿気をコントロールして快適な住まいに

セルロースファイバーの最大の特長は、木質繊維が持つ吸放湿性です。
換気やエアコンに頼らなくていい、快適な室内環境をつくりだすには、この吸放湿性がとても重要なのです。

木の優れた調湿性能

空気の入った管でできた木の繊維は、いつもわずかな湿り気を要求します。

それは生き物としての証なのかもしれません。だから十分に乾燥した木でも湿度を調整する機能(調湿機能)があります。
一般に建築材料として使用される木材の含水率は、約15%程度で平衡状態を保ち、雨の日は含水率が少し増え、晴れた日は逆に減ります。つまり、木には雨の日は室内の水分を吸い、晴れた日は水分を吐くといった吸放湿性があります。わたしたちが呼吸をするように、木も呼吸しているのです。

日本の夏は、温度が高いうえに湿度も高い。このような日本特有の高温多湿の環境における住まいの湿度調整には、木材が最も適しています。

人間が「心地よさ」や「不快」を感じる要素としては、温度、光、風、湿度といったものがありますが、その中で一番大切なのは「ほどよい湿気」ではないでしょうか。わたしたちの肌はいつも適度の湿度を求めているからです。

住宅にも同じことがいえます。床、壁や天井などに湿度調整機能をもたせることで常に一定の湿度が保たれて快適な空間となり、そこに住む人の肌にも一定の湿度が補給されるのです。

セルロースファイバーは自然のエアコン

水は蒸発するときに熱をまわりから奪います。

夏の暑い日に、庭に水をまくと涼しくなります。同じ場所でも、コンクリートやアスファルトの地面と芝生が生えた地面とでは温度が違います。それは、芝が水分を蒸発させて地面から熱を奪うからです。都市の屋上緑化を国や自治体がすすめていますが、これも屋上に植物を植え、植物から熱を放散して建物の温度を抑えているのです。

セルロースファイバーの孔の中に水を蓄える機能があることは話しましたが、その水を蒸発させるときにも、まわりから熱を奪います。

昔の日本家屋の壁は土壁でできていました。土壁の家に入ると夏でもひんやりします。なぜでしょう。土壁は年度と5センチほどに刻んだ藁(稲)でできています。藁は粘土が崩れないようにするためのツナギの役割もありますが、植物繊維なので、沢山の孔が空いており、空気や空気の中の水分を吸収します。それが、土壁に含んだ水分を蒸発させ、室内の温度を下げてくれるのです。

セルロースファイバーには調湿性能があると同時に、室内の温度を下げる、つまりエアコンの作用もあるというわけです。

木の調湿性能をもつ断熱材

セルロースファイバーは、様々な太さの繊維が絡み合い、空気の層を作ることはもちろん、1本1本の繊維の中にも空気胞が存在しています。この空気の存在がよりいっそう熱や音を伝えにくくしているうえに、木質繊維特有の吸放出性をもっているので、適度な湿度を保っています。

セルロースファイバーは木が本来もっている一定の湿度を保つ「吸放出性」や「断熱性」といった優れた機能をそのまま受け継いでいます。

セミナー当日、プレゼン用のサンプルや実験装置を逐次活用しながら色々な説明をしてくれました。

難燃性・吸音性・添加されたホウ酸効果による防カビ・防虫性・環境性等々。

様々なメリットのあります。

でも何故か、『調湿性』の話は出てきませんでした。

不思議に思い、担当者に耳打ちしました。

「調湿性の話はしないの?」

担当者は申し訳なさそうに言います。

「セルロースファイバーは断熱材ですから・・・。」

「湿気を吸わせれば、色々ありますし・・・。」

なんとも歯切れの悪い感じです。

でも最後には、はっきりと答えてくれました。

「弊社では、セルロースファイバーの内側に『防湿・気密シート』を貼る施工をお勧めしています。」

納得です。

湿気を吸ったセルロースファイバーは重量が増えて沈んでしまいます。上部に隙間が開けば、それは断熱欠損です。そこから内部結露の発生する可能性が大きくなります。

断熱材は内部にある動かない空気が熱を保ちます。湿気を吸った断熱材の断熱性は大きく低下します。これも内部結露の危険性を増大させるでしょう。

断熱材に蓄積された湿気は、都合よく室内に戻ったりしません。そのまま建物外に排出されるのが一般的です。

それなのに積極的に断熱材に湿気を吸収させる事を勧める人がいるとしたら、恐ろしくて付き合えませんよね。

突っ込んだ話が出来て良かったと思います。これで安心してお付き合いが出来ます。

この場を借りて、ここで改めて宣言させていただきます。

弊社は、セルロースファイバーを『断熱材』として使用します。

その際の、調湿効果は考えません。

当然の事ながら室内側には防湿・気密シートを丁寧に施工し、湿気を吸収させないようにします。

室内で発生した湿気は室内で処理し、建物外からの湿気は断熱材に吸収させません。

これがセルロースファイバーの正しい使用方法だと思います。

 

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