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日経アーキテクチャーの記事にエアコンの『再熱除湿』についての記事が掲載されていました。
みなさんも興味のある話題だと思います。
松尾和也氏の記事をそのまま、掲載させていただきました。
家庭用エアコンで中上位機種の除湿運転は「再熱除湿」という方式が多く使われていました。
これは冷房によって空気の温度と水分量を下げた後、冷やし過ぎた温度を再び温めることによって、温度はそのままで水分量だけ下げた空気をつくり出すという機能です〔図1〕。
当然ながら再び温めるには余分なエネルギーが必要なので「再熱除湿は冷房運転に比べて光熱費が高くつく」という課題がありました。
それでも、梅雨時のように湿気が非常に多い割に冷房だと寒くて不快に感じる時期には、高くついても再熱除湿を使う意義は十分にありました。
そんな再熱除湿ですが、ここ数年でエアコンメーカー各社は、採用機種を減らしています。
エアコンに詳しい住宅実務者の間では時々話題になりますが、この事実を大々的に取り上げている記事を、まだ見たことがありません。
今回は、このことを解説します。
「日経業界地図2016年版」(発行:日本経済新聞出版社)によるとルームエアコンの国内シェアは1位パナソニック、2位ダイキン工業、3位三菱電機、4位日立アプライアンス、5位富士通ゼネラル、となっています。
上位5社でシェアのほぼ8割を占めています。
このうちパナソニック、ダイキンは最新型の機種においては再熱除湿を採用していません。
この2社の合計シェアは約40%になります。
また、今でも再熱除湿を採用している日立と三菱のシェアは足しても約27%です。
この2社のエアコンにおいても再熱除湿がついているのは中上位機種だけですので、現在、国内で販売されているエアコンのうち再熱除湿機種である確率はおおよそ10~15%くらいと推測しています。
ただし、各社において長らくモデルチェンジが行われていない機種においては今でも再熱除湿機能が残っている場合もあります。
また各社再熱除湿の見直しは、2012年から2014年頃に一気に加速した感があります。
ほんの数年前まで中上位機種の大半が再熱除湿方式であったことを考えると、もはや「ドライ運転は、お金がかかりますからご注意下さい」という決まり文句をいうと、誤ったアドバイスをしている確率のほうが高いという状況になってきていることになります。
なぜこうなったのか?
再熱除湿の場合、第二膨張弁が必要なほか、室内機熱交換器の面積も大きくせざるを得ないことから製造コストが上がってしまうようです。
これが、再熱除湿が減っている最大の原因といわれています。
加えて省エネを重視する風潮のもと「ドライ運転の方が省エネです」という誤解からドライ運転を使われた結果、“増エネ”になってしまうリスクを嫌ったのかもしれません。
また「再熱除湿運転をしたら高くついた」というクレームを嫌がったということも考えられます。
あるいは、再熱除湿運転をなくせば、ドライ運転を用いた人でも年間での利用エネルギーは確実に減らせるから・・・。
だいたいこのような理由が再熱除湿を削減に向かわせたのではないかと想像しています。
その代わりに、しっかりと除湿する能力が弱くなったことも認識しておく必要があります。
代替方式として、ダイキンでは「ハイブリッド方式」、パナソニックでは「快適除湿モード」など、各社独自の方式を出してきています。
共通するのは、以下の2点です。
(1)従来の弱冷房方式よりしっかり除湿ができ、温度はほとんど下がらない。
(2)再熱除湿方式ほどの除湿は期待できないが、消費エネルギーは少ない〔図2〕。
私の知り合いの建築家で、再熱除湿の代わりに床下エアコンを夏にも暖房として使うことで、他の場所につけたエアコンの除湿機能を補填するという裏ワザ的なやり方をしている人もいたりします。
またデシカント方式の除湿機では吸着材で吸い取った水分を熱で飛ばしています〔図3〕。
いずれにせよ、除湿するには熱があるにこしたことはないのです。
そう考えると、超上級者向けかつ一歩間違えると暑くなるリスクはともないますが次のような方法も考えられます。
外部日射遮蔽措置で日射を遮蔽している住宅の場合、適量だけあえて日射を屋内に入れるという方法です。
こう書いている私自身、まだこれを建て主に薦めたことはありません。
非常に研究熱心かつまめな居住者であれば、こういった住まい方もできなくはないでしょう。
様々な機能が増えて、ますます比較が難しくなっているエアコン。
温度をあまり下げない状況で、「多少光熱費が余分にかかってもしっかり除湿したい」という人には再熱除湿は有効な手法です。
適切な使い方をする人であればエアコンを選定する際の重要なポイントと言えそうです。