冬の寒さと健康の関係3

(一社)健康・省エネ住宅を推進する国民会議 発行

 苅尾七臣 監修

 医師と考える健康な家づくり

 の抜粋記事を中心に

 寒さと健康の関係をシリーズでお伝えしています。

厚生労働省の調査によると、循環器疾患に結び付く高血圧と推定される日本人は全国で4000万人以上。

実に日本人の3人に1人は高血圧とされています。

なぜ高血圧になるのか。

高血圧にはどんな危険があるのか。

詳しく見ていきたいと思います。

血圧とは、心臓から押し出された血液が血管の壁を押す力の事です。

心臓の筋肉を収縮させて血液を送り出す時が、最も血圧値が高い『上の血圧(収縮期血圧)』。

大動脈の弁を閉じて心臓を膨らませ、血液を貯め込んでいる時が、最も血圧値が低くなる『下の血圧(拡張期血圧)』と言います。

血圧が上がる要因にはいくつかあります。

例えば・・・

①両親が高血圧の場合、子供は約50%の確率で高血圧になると言われています。

②塩分の摂り過ぎ・肥満・過剰なストレス・アルコールの過剰摂取・喫煙・運動不足などの生活習慣は高血圧を増加させると言われています。

③寒くなると私達の身体は体温を逃さないように血管が収縮し、血圧は上昇します。

高血圧で最も問題となるのは、動脈硬化を引き起こす事でしょう。

動脈硬化とは、血管が弾力を失ったり血管の内腔が狭くなる事を言います。

高血圧が続くと、血液の圧力に耐える為動脈の血管壁が厚くなり、血液が流れる内腔が狭くなります。

また血管が傷つくとコレストロールなどの脂質が溜まりやすくなり、さらに内腔が狭くなります。

動脈硬化で血管が狭くなると血圧は益々高くなります。こうした悪循環が、様々な病気の併発に繋が事も忘れてはなりません。

 

診察室で測定した血圧が正常でも、診察室以外では高血圧を示す病態を『仮面高血圧』と言います。

仮面高血圧に最も多いのが起床後や朝に血圧が上昇するタイプであり、これを抑制する為には食事・運動・睡眠と並び、住宅内の室温が重要な役割を担う事もわかってきました。

人間の自律神経系には、血圧や脈拍を増加させる交感神経系と反対に血圧や脈拍を現象させる副交感神経系があります。

通常、夜になり眠りにつくと副交感神経が優位になり血圧は低下します。朝に近づけば徐々に交感神経が優位となり、通常の場合であっても朝は血圧が高い傾向にあります。

加えて、起床後に寒冷に晒されると交感神経が刺激され血管が収縮することもあります。

冬季に裸足で冷たい床に触れた時や、冷水で顔を洗った時などがこれに当たります。

血管が収縮し、血圧が急激に上昇する懸念があるんです。

特に高齢者の場合は起床後2~3時間は注意が必要です。

気温や室温の低下によって血管収縮を引き起こし、冬季の早朝に血圧が上昇しやすい事が判っています。

近畿大学、岩前教授の研究チームは2002~2008年に掛けて、住まいの『居住者健康性』に対する影響を明らかにすることを目的とした調査を行い、その結果を公表しています。

2002~2008年の間に新築住宅に転居した人を対象に行われたアンケートでは、最終的に2万人にも及ぶ人の協力を得ました。

この調査の中では日常生活習慣も聴いています。

飲酒の頻度・喫煙の有無・運動の頻度等々。それぞれの行為ごとの健康改善効果を分析したものが次のグラフです。

この調査結果は

生活習慣が健康改善に与える影響は大きいものであるが、

『住宅の高断熱化』がもたらす健康改善効果はそれを上回るものである。

という事を明確に示しています。

健康維持・増進住宅(高断熱・高気密・機能する計画換気の3要素を高いレベルで備えた家=FPの家)の出番は益々増えているようですね。

家族みんなが健康に暮らせる家づくり、真剣に考えてみませんか。

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