blog
今朝、通勤電車の中で読了しました。
もとめる断熱レベルとめざす省エネレベル
南雄三 著
建築技術 刊
基本的に、南雄三氏は大好きです。
いつも、難しい建築に関する事を一般の方にもわかりやすく書いてくださっています。
家づくりを考えている方に、弊社の家づくりをご理解いただくための工夫を凝らす立場の私としては
今までも、たくさん参考にさせていただきましたし、今後もお世話になると思います。
今回の内容を、私なりに簡単にまとめてしまえば
断熱性能を高める事は大事だけれど
断熱が全てではないよ。
断熱で得る事のできる便益(EB)は、高性能設備を採用する事で
簡単に得る事が出来るよ。
でも省エネ以外の便益(NEB)を得ようとすれば、やっぱり断熱性の向上は必要だよね。
要は断熱性能と高性能設備のバランスでしょ。
一旦原点に立ち返り、健康で快適な省エネ住宅をつくる上で必要な断熱レベルを考えてみませんか?
という事になります。
『生殺し温度』という、氏独特の言い回しで『寒いけど我慢できない訳でもない』温度(15℃を下回らない)を設定し
無暖房でこれを実現できる環境をひとつの解として、解説を加えてくれます。
なるほど・・・。いつもながらたくさんの気づきを与えてくれる本を書くなぁー。
でも、気密について書いた部分だけは少し不満に思いました。
以下、抜粋です。
高気密が必要な理由を問えば、ほとんどの場合「隙間風を防いで快適を求めるため」という答えが返ってきます。
もちろん間違いではありませんが、真意とはいえません。
北海道で断熱化が始まったころ、土台が腐る事故が起きました。
さっそく産官学共同で原因追及の調査研究が行われました。
当時、そんな情報をキャッチした道外の私達は「だから断熱化は危険だ」「グラスウールはダメだ」と愚かな判断をしてしまいました。
ところが、道内で出た結論は・・・。
図1のように壁に充填された断熱材に床下から湿気が入り込んだために結露が起こり、腐朽菌が繁殖して土台を腐らせたというものでした。
そこから「断熱には気流止めが必要」という論に導かれました。
気流止め=気密化、つまり断熱化したら気密にしなければ内部結露の危険を招く。
この警鐘をもって、『高断熱・高気密』という言葉がつくられたのです。
温暖地ではC値5.0㎠/㎡以下、寒冷地では同2.0㎠/㎡以下にすることが指導され、
図2・3のように、5.0㎠/㎡以下では気流止めが、2.0㎠/㎡以下では気流止め+防湿層を張る事が目安となります。
このように、気密の目的は「隙間風をなくして快適に」という温熱的な存在ではなく、「内部結露防止」としての物理的な絶対条件なのです。
ここまでの文章にケチをつけるつもりは毛頭ありません。まさに書いてある通りです。
そして、この後『高気密の意味』と題して気密性と計画換気の関係を説明してくれます。
結論として、計画換気を実現する為にはC値2.0㎠/㎡以下にする必要があり、その為の気流止め+防湿層施工は必須である。
また熱交換換気の場合であれば、さらに高いC値1.0㎠/㎡以下が求められることになる。
そしてまとめとして、
以上のように断熱すれば気密が必要で、気密になれば換気か必要になり、換気を適正に動かす為に高気密が必要になる・・・。
なんだか怖い世界に引きずり込まれるような気持になりますがその通り、軽い気持ちで断熱してはいけないのです。
と結びます。
ここまでも問題ありません。
そして『気密と熱損失』と題して必要気密性能を
第3種換気であればC値1.0㎠/㎡以下、熱交換換気であればC値0.5㎠/㎡以下
とまとめているんです。
C値競争を揶揄するくだりさえありました。
ここが、私の考えと違います。以下、私の考えを書きたいと思います。
C値の高い建物も、室内の上下温度差や建物に当たる風が強い場合には隙間風からの漏気が増えてしまいます。
この隙間風からの漏気を防ぐためには、ひたすらC値を高めるしかありません。
ちなみにC値0.5㎠/㎡の住宅でさえ、上図のように隙間から漏れる空気量は全体の34%にも及ぶそうです。
そして、忘れてはいけない事があります。
気密性は経年で劣化します。
パッキンの収縮や防湿シートの劣化、気密テープのはがれ等々・・・。
原因は様々ありそうですが、実際に気密住宅の気密性能を新築時と経年後で比較した上図を見れば明らかです。
パッキンを交換するなど、簡単に是正出来る部分は問題ありませんが、簡単にできない部分もありますよね。
そうした部位を明確にし、そのための対策を検討・実施する事はもちろん大切です。
でも、
10年後、20年後、30年後の気密性能を0.5~1.0㎠/㎡以下に保つためには
もっと気密性の高い家をつくるしかないと思います。
知っていて、敢えて書かなかったのかも知れませんが・・・。
posted by Asset Red
住所:東京都練馬区北町2-13-11
電話:03-3550-1311
東武東上線 東武練馬駅下車5分