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お客様という訳ではありませんが・・・。
昨日、FB友達から教えて戴いた貴重なデーターを整理してみました。
工学院大学 西川研究室のレポートです。
かなりマニアックな話です。ご覚悟を・・・。
呼吸する壁の深読
はじめに
近年普及している高気密高断熱住宅において、外壁内の室内側に防湿フィルムを施工することが推奨されています。
防湿フィルムは室内で発生した湿気が壁内に侵入することを妨げ、内外の温度差によって発生する冬型の壁体内結露を防止する役割を担っています。
しかしながら、湿流が逆となる夏季に於いて防湿層は、壁体内から室内に湿気が移動することを妨げ、『夏型結露』の発生を助長することが懸念されています。
実験条件
実験条件を以下に示します。
計測期間:白色 2015年8月3日~8月18日/黒色 2015年8月20日~8月27日
計測間隔:5分間隔
測定範囲:温度0~55℃/相対湿度10~95%
測定精度:温度±0.3℃/相対湿度±5%
実験場所:東京都八王子
方位:南
室内設定温度:25℃
室内設定相対湿度:60%
実験期間は2015年8月3日から8月27日、工学院大学八王子校舎の居住環境制御システム比較実験装置にて実験を行いました。
また通気工法及び遮熱通気工法においては、外壁色の違いによる壁内の熱湿気性状への影響を比較するため、サイディングを交換しました。
その期間は、白色が8月3日から8月18日の16日間。黒色が8月20日から8月27日の8日間です。
供試体概要
供試体は図に示すように650mm×1600mmとし、木枠の中に間柱を設置し両脇を緩衝空間、中央を評価対象としました。
供試体は上下方向に空気の移動がない枠組み壁工法や高気密の在来木造住宅を想定したものであり、その上下端はポリエチレンシートによって断湿しています。
通気層工法は木造住宅工事仕様書に準じ、室内側に防湿層、室外側に通気層を設けた断面構成です。
外張り断熱工法は通気層を設けず外装材に断熱材を用いた断面構成であり、遮熱通気工法は通気層の間に低放射率材料として、気泡緩衝材をアルミ箔で挟み込んだ建材を用いています。
それぞれの工法の防湿層は周囲の湿度に応じて透湿抵抗が変化する『可変透湿シート』を用いますが、通気層工法に関してはそれに加え、一般的な防湿フィルムを施工した供試体で実験を行いました。
断面構成は断熱材にグラスウールと木質繊維断熱材の2種類、外壁色は外張り断熱工法を除いて白・黒の2種類のため、実験に用いた外壁の断面構成は合計で14種類になります。
外界気象計測
外界気象の計測は、実験室屋上に設置された通風乾湿計により外気温度・相対湿度を計測。
実験室南面外壁に設置された精密全天日射計により屋外垂直面日射量の計測を行いました。
壁体内部の温湿度分布
外界気象と夏季日中における各壁体内部の温度と相対湿度分布を代表日別で以下に示します。
白色代表日の8月6日、黒色代表日の8月22日は共に晴天日。
外壁の屋外側と室内側に大きな温度差が生じていますが、8月17日は雨天日のため、内外の温度差はほとんど生じていません。
白色代表日の8月6日と黒色代表日の8月22日を比較すると、外壁色による日射吸収率の違いから、外壁表面温度は黒色代表日の方が7℃程度高く、日射の影響を受けやすいことがわかります。
夏型結露は多孔質材料の昇温による放湿が原因にあることから、外壁色は白色系の方が発生しにくいと言えます。
外張り断熱工法や遮熱通気工法を採り入れることにより、日射の影響は抑制されることもわかりました。
木質繊維断熱材の吸放湿特性
下図に白色代表日での断熱材室内側における相対湿度の計測結果を示します。
全ての工法で木質繊維断熱材の相対湿度は低く推移しています。
日中の温度上昇に伴い胴縁や外装下地から放出された水蒸気が、グラスウールを用いた外壁ではそのまま室内側に移動するのに対して、木質繊維断熱材を用いた外壁では断熱材自体が吸湿を行ったためと推察されます。
可変透湿シートによる透湿性
防湿フィルムが用いられている通気工法と可変透湿シートが用いられている通気工法を比較すると、日最高相対湿度は前者98%に対して後者は94%でした。
この差は時間経過と伴って増大していて、18時の時点での壁内相対湿度は前者94%、後者84%。24時の時点で前者79%、後者64%となりました。
これは壁体内が高湿な状態となった際に可変透湿シートの透湿抵抗が小さくなり、室内空間へと湿気を逃すことで壁体内の相対湿度が減少する傾向が表れていると考えられます。
また冬季において、可変透湿シートは防湿フィルムに比べ約10%高く推移しているが、一日を通じて70%を下回っており、『冬型結露』は発生しないと予想されます。
壁内相対湿度の発生頻度
実験期間(24日間/576時間)を通じての断熱材室内側における相対湿度の発生頻度を以下に示します。
グラスウールを用いた外壁AからDにおいて、壁体内に結露水が生じるとされる相対湿度95%以上となる状態は
A:37.5時間
B:7.9時間
C:0時間
D:0時間
また木質繊維断熱材を用いた外壁EからHにおいては、相対湿度が80%を上回る事も無く、壁内結露は生じないものと予測されます。
報告は以上です。
結論を簡単にまとめると以下のようになります。
①室内側に防湿フィルムを施工したグラスウールの壁体内に夏型結露は発生する。
②防湿フィルムを可変防湿シートにする事で、その度合いは減少する。
③可変透湿シートを使用しても、冬型結露の発生が増大することはない。
④外張り断熱工法および遮熱通気工法も、夏型結露においては有効な対策となる。
⑤外壁は白色より黒色の方が壁内温度は上昇する。
⑥遮熱通気工法は壁体内温度上昇対策においても有効である。
⑦室内側に防湿フィルムを施工した木質繊維断熱材の壁体内に夏型結露は発生しない。
やはり、蒸暑地における調湿性のないグラスウールの壁はどんなに防湿施工を徹底していても夏型結露を防ぐことができないようですね。
グラスウールを採用するならば、可変透湿シートの採用は必須でしょう。
いゃー、木質繊維断熱材の調湿性能には驚きましたね。
でも、室内側の防湿フィルムを省略したらどうなるのでしょうか?
確実に相対湿度は上がり、断熱性能は下がります。
どの位の湿度になるのか、興味津々です。
あいにく今回の実験に発泡プラスチック系断熱材は含まれていませんでした。
でも断熱材自身が防湿層を兼ねる硬質ウレタンも、確実に夏型・冬型を問わず結露を防ぐことが出来ます。
なんとなく実在を疑われていた夏型結露でしたが、グラスウールの家には存在するようですね。
あなたの家は大丈夫ですか?
S様、貴重なデーターありがとうございました。
posted by Asset Red
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