熱伝導率に対する経年劣化の考慮

昨日大宮で行われた、FPの家 北関東地区研修会に参加しました。

『命の基本仕様とブランディング』~中小工務店の唯一無二の戦略とは~

講師はオストコーポレーション北関東の吉田登志幸氏

自立循環住宅研究会でもお世話になっている方です。

改めて、ブランディングの難しさと重要さを確認することが出来ました。

でも今回書きたいのは、その話ではありません。

当日の話には無かったのですが、戴いた資料の中にあったデーターが気になって仕方ありません。

その事を書きたいと思います。

ネタ元は『NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)』の『断熱材の長期断熱性能評価に関する標準化調査成果報告書』の中にある『経年劣化を加味した熱伝導率算出のための補正係数』です。

簡単に書くと、こうなります。

以下に示す断熱材の場合断熱性能の経年劣化が想定されるため、示される係数或いはISO11561規定により求められた正規化熱抵抗を用いて熱伝導率の計算を行うこと。

ビーズ法ポリスチレンフォーム・・・0.98

押出法ポリスチレンフォーム・・・0.88

硬質ウレタンフォーム・・・0.81

吹付硬質ウレタンフォーム(現場発泡)・・・0.75

フェノールフォーム・・・0.92

ポリエチレンフォーム・・・0.99

つまり、ポリエチレンフォームは経年劣化で断熱性能が1%しか低下しないけど、硬質ウレタンフォームは19%も低下するから、予め補正して計算してね。

ということなんです。

これって、ネオマフォームがカタログで説明しているガスの置換の事ですよね。

以下、ネオマフォームのページからの抜粋です。

ネオマフォームの気泡は小さいだけでなく、極めて穴の小さい膜による気泡が1つ1つ独立して構成されています。(独立気泡率 94~95%)
また、素材のフェノール樹脂による膜は、中に閉じ込められた発泡ガスが抜けにくく、同時に外からの空気の侵入も少ないので、 長期間断熱性能を維持できます。

独立気泡膜写真(当社撮影)

ネオマフォームの気泡膜

従来技術品の気泡膜

空気と気泡内の発泡ガスの置換イメージ図

ネオマフォーム

ガスバリア性の高い気泡膜
=経年劣化が小さい
 空気 発泡ガス

ガスバリア性の高い気泡膜

ガスバリア性の低い気泡膜
=経年劣化が大きい
 空気 発泡ガス

ちなみにネオマフォームはフェノールフォームなので、先述の補正値を見ると8%ほど劣化するようですよ・・・。

でも、築17年超のFPの家の断熱材の物性を調べたら『新築時と変わらない』ことが確認されています。

まさに『論より証拠』です。

50mm厚断熱材の25年後の熱抵抗という事ですが、あと8年で急激に劣化するとも思えません。

ポリスチレンフォームが劣化しないと言うのも納得いきませんね。

解体すると、収縮して固くなったものを見る事があります。

不思議・・・。

現場発泡ウレタンの『断熱性能25%ダウン』は納得です。

本当のところはどうなんでしょうか?

硬質ウレタンフォームにも色々あるという事なのかもしれません。

 

追加させていただきます。

NEDOの文章を見ると、『スキン層の有無によるガスの置換が問題』と書かれていました。

スキン層とは、硬質ウレタンフォームを吹き付けた後、発砲してくる断熱材の表面層のことを指します。

食パンを型に入れ焼き上げた時をイメージしてください。

表面の6面に茶色くて硬い部分があります。

スライスした際に『パンの耳』と呼ばれる部分です。

白い部分と比べると、詰まっていて穴も少なくなっていますよね。

硬質ウレタンフォームも同じです。

一般的に販売されているボード状の硬質ウレタンフォームは、スキン層をカットして形を整えています。

食パンで言えばサンドイッチ用の耳なしスライスパン状態。

そして硬質ウレタンフォームで重要なのが、『スキン層』があるかどうかなんです。

これがあるかどうかで、透湿性や置換性が異なる訳です。

FPパネルは木枠を組み、表面にクラフト紙を張りつけ、その中にウレタンフォームを充填します。

その際に25トンの荷重を掛け、内部の発泡を均一にするよう管理されています。

スキン層は木枠もしくはクラフト紙の中に存在します。

組立図に基ずく完全注文生産ですから、原則として無加工の状態で取り付けられます。

おそらくNEDOの調査で経年劣化していたのは、耳なしパン状態の硬質ウレタンだと思います。

スキン層がある硬質ウレタンフォームは一般的ではないですからね。

これで、FPパネルが経年劣化しない理由がわかりました。

胸の中のモヤモヤしたものが吹き飛んだ気分です。

 

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