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閉鎖型プランでエアコンによる暖房を使った場合の話です。
断熱性能による暖まり方の違いについて・・・。
建築知識 ビルダーズ №28
特別付録
心地よい住まいの暖房計画
の中から抜粋した記事をご紹介します。
最先端CFDシュミレーションによる検証結果となります。
CFDシュミレーションとは、数値流体力学の略称です。
空気の流れをシュミレーションすることで、目に見えない室内の気流分布や温度分布などを視覚的に表現出来ます。
空間構成・断熱性能・暖房方式などの条件を変更することで、それらの要素が室内環境に与える影響を明らかに出来るんです。
今回はUA値は0.82W/㎡・KのH28年基準と、UA値は0.40W/㎡・KのHEAT20のG2グレードで比較しています。
HEAT20はその略称であり、呼称です。長期的視点に立ち、住宅における更なる省エネルギー化をはかるため、断熱などの建築的対応技術に着目し、住宅の熱的シェルターの高性能化と居住者の健康維持と快適性向上のための先進的技術開発・評価手法・そして断熱化された住宅の普及啓蒙を目的とした団体です。
そこで推奨される断熱グレードがG1・G2。
20℃になったリビングの暖房を夜11時に消して、朝5時までに下がる温度がH4基準では9℃を下回るくらいですが、H25基準ではそれが11℃くらいになります。
G1では13℃程度、G2では15℃程度にしか下がりません。
エアコンの投入熱量はLDKの居住域(高さ1100mmまでの領域)の快適性が中立(PMD=0)となるように設定。
外気温度は5℃、日射や内部発熱の影響は考慮なし。
閉じた部屋でも空気の移動ができるようになっていて、0.5回/hで換気量を設定(第3種換気)。
まずは平成28年省エネ準相当の家の場合です。
エアコン1台で暖められた家中の温度を示しました。
部屋ごとに温度ムラも大きく、上下温度差は5.5℃にも及んでいます。
水廻りの温度は12.5とかなり低めになっています。
続いてHEAT20のG2グレードの家の場合です。
断熱性が高い為、少ない熱で部屋全体がムラなく快適になっています。
上下の温度差もH28基準の家よりも少なく、2.4℃しかありません。
頭とかかとの温度差は4℃以内が望ましいとか。
H28基準はNG。
G2グレードはOKと言いたいところですが、そうはいきません。
健康維持を目指すなら、家中隈なく19℃以上を確保しなくてはいけません。
水廻りの温度は14.5℃、4.5℃上げる必要があります。
暖房室の温度が高いのも気になるところでしょうか。
換気システムの計画がうまく出来ていないと思われます。
換気システムを利用して、暖められた空気を非暖房室に移動させる方法があります。
でも、この方法については別の機会にしたいと思います。
最後に、両者を比較した図を見てみましょう。
左側がH28基準の家、右側がG2グレードの家となります。
前者の方が、床の表面温度は低いのに天井の温度は高いんですね。
頭寒足熱とは逆になっています。
エアコンの吹き出し温度も前者の方が4.1℃高いので、風が不快に感じることでしょう。
そもそも、両者のエアコンへの投入熱量自体が違います。
前者は2.041kw、後者は1.432kw。
kwhあたりの電気代を25円とし、8時間稼働した時の電気代は408円と286円。
これを30日続ければ、12240円と8580円になります。
前者は、電気代を余計に掛けているのに後者に比べて快適さを得ていません。
つまり国が義務化するレベル(H28基準)の断熱性能では、エアコンで快適な生活は送れないと言う事です。
もちろん省エネ・省CO2でもありません。
せめて、G2グレードのワンランク下である『G1グレード』の家にした方が良いのではないでしょうか。
こんな資料があります。
エコワークスという建築会社の小山社長が公開しているデーターです。
断熱性能別のイニシャルコストとランニングコストを築年数で比較した図となります。
新築時に掛かるコストをイニシャルコストと言います。
断熱性能を高めるためにコストが余計に掛かる為、イニシャルコストも当然 H25<G1<G2となります。
建物を維持する為のコストをランニングコストと言います。
ここでは主に光熱費を指します。
省エネであればあるほど光熱費は掛かりません。
よってH25>G1>G2となります。
まずはH25基準(H28基準とほぼ同じ)の家とG1グレードの家を比較しましょう。
新築から6年程はH25基準の家が安くなっていますが、それ以降はG1グレードの家の方がお買い得です。
またG1グレードとG2グレードを比べてみると、当初はお得なG1ですが30年目を境に逆転することがわかります。
つまり、6~10年程度で家を建替える前提であればH25基準で建てるのがお買い得。
6~30年程度で建替えるならば、G1グレードがお買い得。
それ以上家を長持ちさせるのならば、G2グレードがお買い得ということです。
安物買いの銭失いにならない為には、断熱性能と健康・快適の関係や費用対効果をしっかり把握することが重要だと思いますよ。
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