通風(採風)は快適か?

今日は日曜日。現場はお休みです。

朝からOB宅の家を回って、細かなメンテナンス工事の打合せをしていました。

「最近外出することが少ないんで、たまに玄関の外に出るとびっくりするよ。」

「外の暑さが、全くわからないんだもんね。凄いよこの家。」

「太陽光発電のお蔭もあって、電気代も安くて助かるしさ・・・。」

皆さんに喜んでいただけていて、本当にうれしく思います。

でも、第3種換気システムを採用している方が圧倒的に多いので『湿気対策』がまだまだなんですよね。

気温はそれほど高くないけど、湿度が異常に高い時ってありますよね。

そんな時は、エアコンの温度設定よりも室温の方が低くなります。

よってエアコンは稼働せず、除湿効果はゼロに等しい・・・。

自然給気口からは、湿気たっぷりの外気がどんどん入ってくる。

エアコンの除湿能力が勝つか、自然給気口から入る湿った空気が勝つか・・・。

室温27~28℃、相対湿度60%超なんて日もありますよね。

先日参加した『アジア・カンファレンス2017 IN TOKYO』では、室温25℃・絶対湿度12g/㎏DAが最適と言っていました。

上図が、25℃・絶対湿度12g/㎏DA時の湿り空気線図です。

絶対湿度については、もう説明不要ですよね。

これを相対湿度で言うと、60%になります。

活動量にもよりますが、着衣量0.3clo(半袖シャツに半ズボン)程度であれば、個人的には寒くて仕方ないレベルだと思います。

不快指数は72.8となっています。

不快指数は70〜74で不快感を抱く人が出始め、75〜79で半数以上が、80〜85で全員が不快と感じ、86を超えると我慢ができなくなります。

72.8であれば、おおむね良好というところでしょうか。

上の湿り空気線図は、気温27.0℃、相対湿度54.0%。不快指数は74.9(少し高め)になっている時のものです。

絶対湿度が12g/㎏DA。

先述の25℃・12g/㎏DAと比べると、少し室温が高くなっています。

このように、絶対湿度が同じでも室温と相対湿度はバラバラです。

ちなみに絶対湿度と温度と相対湿度の関係を以下に挙げてみます。

気温26℃・相対湿度50%→絶対湿度10.5g/㎏DA

気温26℃・相対湿度60%→絶対湿度12.6g/㎏DA

気温26℃・相対湿度70%→絶対湿度14.8g/㎏DA

気温27℃・相対湿度40%→絶対湿度8.9g/㎏DA

気温27℃・相対湿度50%→絶対湿度11.1g/㎏DA

気温27℃・相対湿度60%→絶対湿度13.4g/㎏DA

気温28℃・相対湿度40%→絶対湿度9.4g/㎏DA

気温28℃・相対湿度50%→絶対湿度11.8g/㎏DA

気温28℃・相対湿度60%→絶対湿度14.3g/㎏DA

気温28℃・相対湿度70%→絶対湿度16.7g/㎏DA

ピンク字が快適条件となっています。

もちろん、断熱・気密がキチンとできていて床・壁・天井からの放射もパランスが取れているのが前提です。

 

健康を考えた場合の相対湿度の範囲は40~60%です。

室温25℃はともかく、絶対湿度12g/㎏DAは妥当な線なのかもしれませんね。

湿度対策については暗中模索の状態です。

健康・快適性とコストのバランスをどこで採るのか・・・。

もう少し検討が必要です。

 

ここで、タイトルを思い出してください。

通風(採風)は快適か?

えっ、今までそんな話は全然出てないじゃん???

そうなんです。

だって、ここまでは前フリですから。

この写真を見てください。

アジア・カンファレンスのパネルディスカッションで使われたデーターです。

壇上に上がっている方達の居住地における月別絶対湿度が示されています。

見にくいと思うので、東京だけ転記します(単位は省略します)。

1月-2.9

2月-3.0

3月-4.0

4月-6.2

5月-8.9

6月-12.1

7月-15.4

8月-16.5

9月-13.2

10月-6.8

11月-5.6

12月-3.6

相対湿度と異なり、絶対湿度は時間による変化が少ないと言われています。

これを見ると、7月から9月の暑い時期は12g/㎏DAを超えているんです。

つまり窓を開けて通風をとれば、室内の空気は絶対湿度12g/㎏DAを超えてしまうという事。

よって、通風はNGとなります。

カンファレンス当日、アジアに住む方々によって発表された内容は

『高湿度の地で、いかに健康・快適な家をつくるか』でした。

外皮の断熱・気密性能を高め、徹底した日射遮蔽を行い、高性能設備を備える。

我が国における『パッシブデザイン』の手法と何ら変わるものではありませんでした。

でも、大きく異なっていたのは

『通風(採風)』という手法が全く語られなかったということでしょう。

参加された方々が、中国・韓国・台湾ということもあります。

PM2.5や黄砂の影響を考え、自然風は極力室内に入れたくないというのも大きな理由でしょう。

でもそれだけでは無い筈。

自国の気象条件をきちんと踏まえ、絶対湿度を適度なレベルにコントロールしようとする時、自然風の利用はマイナスに働くことを充分理解しているからだと思うんです。

夏の『打ち水』も同様です。

未舗装の道路が多く埃を抑えるために行っていた昔とは異なり、現在は埃対策としての役目はそれほど期待されていません。

むしろ気化熱による気温低下が目的で行われていて、推奨している行政機関もあるようですね。

確かに1~2℃程度の気温低下はあるでしょう。

でも、絶対湿度は増大します。

気温が下がっても湿度が上がれば不快指数は上がります。

『風の通り道をつくって気持ちよく暮らす』

通風計画がパッシブデザインのとばかりにアピールする方もいらっしゃいますが、季節を考えた通風が重要です。

いかにも『パッシブデザイン』の使い手という顔をして、実は湿度の事も理解していない素人って意外といるんですよね・・・。

間もなく、9月です。

先程の写真データーによれば、まだまだ窓を開ける時期ではありません。

通風を行うのであれば、良く晴れた10月と5月(6月は微妙です。)に限る!

ということでしょうか・・・。

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