熱交換型第1種換気設備

少し硬い話を書きたいと思います。

熱交換型第1種換気設備おける給排気のアンバランスという話です。

熱交換型第1種換気設備は、給気用のファンと排気用のファンを有しており、比較的多くの住宅の場合は排気側のダクトが短く、給気系統と比較して圧力損失が小さくなっており、排気側の風量が多い。

そのため、室内側が負圧となりやすく、外壁を通じて給気がなされる。

当然ながら、この給気は熱交換素子を通過した空気ではないため予熱されず、暖冷房負荷の低減には寄与しない。

また実際に住宅に設置された状態では、冬季を考えると、換気設備本体への還気温度が低くなるような場合がある。

例えば居室間歇暖冷房を行っている場合に、図に示したように還気を非暖房室(グレーが暖房室で白が非暖房室)からとると、当然ながら予熱の効果も小さくなる。

また十分な気密性がない場合は、給気室(グレー)は加圧され、排気室(白)は減圧され、空気の流れはきれいにはバランスせず、給気のある室は外壁から空気が逃げ、排気のある室には外壁から外気が流入し、それらは熱交換に全く寄与しない。

いずれにしても実質的な熱交換の効果は、瞬時的に仕様値を上回ることがあったとしても、期間としては仕様値より大きくなることはない。

なお、新しい省エネルギー基準では、事業主基準のときと同様に夏季の熱交換による熱回収の効果は、内外温度差が比較的小さい事から計算対象となっていない。

建築技術№768より田島昌樹高知工科大学准教授の記事を一部抜粋させていただきました。

第1種換気設備により建物内空気が正圧になるのに対して、第3種換気設備は建物内空気を負圧にすると言われています。

でも、この記事を読むと建物の気密性の低い建物は当然としても、ある程度の気密性を有した建物であっても、給排気のアンバランスが発生し、換気設備の給気フィルターを関せず流入する外気が存在することがわかります。

また排出される室内空気の熱を回収し、省エネに寄与する効果は夏季には見込めないとも明記しています。

つまり春・夏・秋・冬のうち効果が見込めるのは冬だけということです。

第3種換気設備の自然給気口は複数設置するのに対し、第1種換気設備の給気口はわずか1つしかありません。

外気に含まれる不純物を除去するためのフィルターのメンテナンスは、後者の方がよりシビアになります。

なぜなら汚れ具合による圧損が、より大きくなるからです。

またフィルターが機能しなくなった場合は、給気ダクト内に不純物が付着し、新鮮空気を汚染する恐れもあります。

熱交換型第1種換気設備の採用にあたっては

換気設備自体の消費電力増と熱交換による暖冷房消費電力減の比較だけではなく

給気フィルターの交換コストや給気ダクトの定期的メンテナンス費用増

ダクト配管費用増

等のコスト増を確認・把握し充分検討する必要があります。

なお熱交換型第1種換気設備には、全熱交換タイプ・顕熱交換タイプがあり、前者には個別換気が不要なタイプとそうでないタイプがあります。

どのタイプを採用するかによって、換気設備自体の費用や熱交換による省エネ性も大きく変わります。

今回は、その辺りのことは割愛させていただきました。

健康面・快適性・衛生面・初期コスト・運転コスト・メンテナンス性そして施工性、換気システムの選択には様々な要素が関係しています。

第1種・第2種・第3種、パッシブ換気やデマンド換気なんてものまであります。

何を換気システムに期待するのか?

どの程度の空気質を求めるのか?

考えれば考えるほど、わからなくなってきます・・・。

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