繊維系断熱材と防風・防湿層

弊社が建てる木造軸組工法の家は『FPの家』です。

採用している断熱材は硬質ウレタンフォーム。

そして、これをイラストのように『外皮』と呼ばれる部分に隙間なく入れます。

いわゆる『充填断熱工法』ですね。

硬質ウレタンフォームのような『発泡プラスチック系断熱材(以下、発プラ系)』の場合、充填断熱工法の断熱材として採用される事は少なく、もっぱら外張り工法もしくは付加断熱工法の外張りに使われるのが一般的です。

ボード状の断熱材を隙間なく施工するのは難しいですからね。

そして充填断熱工法に採用される断熱材と言えば、やはり『繊維系断熱材(以下、繊維系)』です。

グラスウール・ロックウール・セルロースファイバー・ウッドファイバー・・・。

今回は、繊維系断熱材について書きたいと思います。

繊維系を使う場合に注意しなければならない点がいくつかあります。

①とにかく濡らしてはいけません。

だから、雨漏りはもちろん内部結露も厳禁です。

②断熱材の中に含まれる動かない空気が暖かさの元。

だから断熱材内部に空気の流れをつくるのも厳禁です。

③断熱欠損を無くしましょう。

あくまでも丁寧な施工が基本です。

上図が一般的な断面構成です。

外側から準に説明します。

外装材の内側に『通気層』を設けます。

これは外装材から侵入した雨水を排出する役目と、断熱材に含まれた水蒸気の排出をするために必要な層となります。

発プラ系の場合も通気層は必要です。

そして、その内側かつ断熱材の外側にあるのが『防風層』です。

透湿防水シート(以下、防水シート)にこの機能を兼ねさせるのが一般的です。

また、外壁合板等を断熱材の外側に隙間なく打ち付けて防風層とする場合もあります。

防風層は発プラ系の場合、必要ありません。

何故なら、発プラ系の場合は断熱材自体に含まれる気泡が断熱の役目をしており、風を受けてもその性能が落ちることがないからです。

防水シートの施工マニュアルを示します。

黄色い四角の中に、防風層として重要なことが書かれていますね。

上下接合部は防水テープで留めることにより、防水性・防風性は向上する。

また3m巾の防水シートを使用することで、上下接合部は少なくなる。

大事な事なので、そのまま引用します。

防水シートは一般的に巾900mm程度あります。

これを横に張っていき、建物をぐるり1周したら、上の段に進みます。

この時の防水シート同志の重ねは90mm以上必要です。

上下の防水シートの重ね部分を示します。

下の防水シートの上部に上の防水シートが重なっています。

この状態で、防水シートの外側に水滴があっても問題ありません。

水滴は、防水シートの上をそのまま落下するだけです。

でも、重ねが上下逆さまであれば大問題。

上の防水シートを伝った水滴は重ね部分で下の防水シートの内側に入ってしまいます。

こんな初歩的なミスをする人はいないと思いますが・・・。

では、何らかの理由で上の防水シートの中に水滴が侵入したらどうでしょうか?

上の防水シートの裏側を伝ってきた水滴は、そのまま下の防水シートを伝ってシートの外側に排出されることもあるでしょう。

ですから、重ね部分を防水テープで留めない方が良い気がしませんか?

でも、別の理由で、留めることが推奨されています。

その理由は風です。

通気層の中は、常に下から上に風が吹いています。

この風はテープを貼っていない状態であれば、重ねの部分から防水シートの内側に侵入します。

そして、繊維系断熱材の中の動かない空気を動かして、断熱性を低下させてしまいます。

 

透湿防水シートに隙間がある場合の熱損失・湿気の侵入というデーターを示します。

左側(シートに隙間がない場合)と右側(シートに1mmの隙間がある場合)の熱損失は実に4.8倍もある事がわかったそうです。

わずか1mmでこの違いですから、防水シートをテープで留めなければとんでもない事になりそうです。

もっとも、防水シートの内側に外壁合板等を張っていれば問題ないんですけど・・・。

建売などのローコスト系住宅の場合は、外壁合板を省略することがありますから、ここはチェックポイントですね。

話を元に戻す前に、外壁合板の事も簡単に触れておきたいと思います。

防風層は水蒸気を通しやすいものを採用するのが原則です。

防水シートしかり、外壁合板しかり。

前者であれば、透湿防水シートが一般的です。

水は通さないけど、水蒸気は通す素材で出来ています。

タイベックシートが有名です。

外壁合板であれば、透湿抵抗の低いものを採用してください。

ダイライトやモイス、ハイベストウッドなどが良いでしょう。

ラワン合板・針葉樹合板やパーティクルボード・OSBなどの水蒸気を通しにくい素材を使用する、断熱材の中の水蒸気が排出しにくくなります。

防風性は担保出来るけど、内部結露を招いては困ります。

続いて断熱層です。

断熱材に調湿性を求める方が時々いますが、断熱材の本来の目的を大切にすべきかと思います。

こんなデーターがあります。

そもそも断熱性能は断熱材の性能と厚さによって決まります。

同じ性能の断熱材であれば、厚い程断熱性能が高くなるという事です。

でもこのデーターでは、25~125mmの断熱材も濡らしてしまえば、その性能は大差ない事を示しています。

繊維系断熱材は濡らしてしまえば、断熱材としての本来の半分以下の性能しか発揮できないんです。

そういう意味で、防水シートの施工は徹底的に行うべきでしょう。

施工途中の雨も、徹底的な管理が必要となります。

加えて、内部結露対策も重要になります。

水蒸気を吸い断熱性能の低下した壁の中では、より結露が進むでしょう。

水分を吸った事で重量が増し、断熱材が変形・脱落するかもしれません。

カビが生えた部分は、もはや断熱材ではありません。

断熱欠損といっても過言ではないでしょう。

グラスウールの施工状況による断熱性能を示しました。

本来の性能に対して、施工不良の場合46~84%の断熱性能しか発揮できないのがグラスウールの難しさです。

他の繊維系断熱材も同様に、濡れてしまえば性能低下は否めません。

製造メーカーがカタログ等にはっきりと『防湿施工の徹底』を謳っているにも関わらず、施工者もしくは設計者側の思惑で防湿シートの施工を省略するのは言語道断だと思います。あくまでも、防湿シートの施工は徹底し、いざという時の安全策として吸放湿性の高い断熱材の採用をお勧めします。

いずれの断熱材を採用しても、施工を丁寧に行わなければ本来の性能を担保することは出来ません。

その点、専門業者による責任施工精度を取っているセルロースファイバーは有利かもしれませんね。

そして忘れてならないのは、仮に熟練者による丁寧な施工が担保されたとしても、わずかな水蒸気の滞留により、断熱性能は低下するという事です。

100%間違いのない施工を行い、濡れていない状態で初めて本来の断熱性能を発揮できるのが繊維系断熱材です。

くれぐれも、間違えのない施工業者および正しい現場管理の出来る監理者を選びましょう。

最後は防湿層です。

もう既に色々と書いてしまいました。

冬においては、室内から断熱材に向かって水蒸気は移動します。

それを防ぐのが防湿シートの役目となります。

防湿層のついている耳付き断熱材を採用する場合もあるでしょう。

でも、完璧な施工を期待するのであれば裸の断熱材を施工し、その上に別張り防湿フィルムを貼る事をお勧めします。

手順はこうなります。

まず断熱材の施工をきちんと終わらせる。

そして設備業者による配線・配管工事を終わらせ、断熱欠損部の補強を行う。

この段階で、断熱材が押されてしまうことがあります。

石膏ボードの裏と断熱材の内側に隙間は断熱性の低下を招きます。

ていねいに是正する事が重要です。

そして、別張り防湿フィルムを隙間なく連続して張ります。

小さな隙間も見逃してはいけません。

何故なら、これが即性能低下そして、躯体の耐久性低下に繋がるからです。

内部結露は、カビやシロアリを呼び込み、躯体を劣化させます。

くれぐれも、こうした事のないようご注意ください。

そうそう、内部結露は冬だけのものではありません。

夏の場合は、水蒸気は外から室内に向かって移動します。

この時防湿フィルムは室内に移動しようとする水蒸気を妨げ、内部結露を招くことになります。

これを夏型結露と呼びますが、これを防ぐには防湿フィルムを可変透湿シートにするしかありません。

防湿フィルムは水蒸気の移動を妨げるだけですが、可変透湿シートは温度によって通したり通さなかったりします。

夏は通すけど、冬は通さない。

便利なシートなんです。

これを採用するためには、裸の断熱材にするしかありませんね。

繊維系の断熱材の長所はたくさんあります。

価格の安さもそのひとつだと思います。

でも施工の難しさと施工の良し悪しによる性能の開きは、明らかな短所だと思います。

計算で求められる断熱性能は、丁寧な施工が行われ、湿っていない状態です。

5年・10年経過して、その性能が担保されているでしょうか?

気密測定をする事でC値を確認する事が出来ます。

最近は多くの工務店がC値の重要性に気づき、隙間の少ない家づくりを行っています。

でもC値は、空気の漏れる隙間の大きさを測定するためのもの。

空気よりも小さい水蒸気の漏れる穴は測定できません。

C値の小さい家は隙間が少なくて、色々と良いことが多いけど、必ずしも防湿性能が高いとは限らないんです。

大事なことは、どんな防湿対策を採用しているのか。

それをどんな風に管理しているのかだと思います。

ご存知ですか?

雨漏りは瑕疵です。

瑕疵とは本来あってはならない欠陥を指します。

瑕疵は発見され次第、無償で修理を行わなければなりません。

ですから雨漏りは、すぐに直してもらえます。

でも、結露は瑕疵に当たりません。

表面結露はもちろん、躯体の寿命を大きく損なう内部結露もです。

内部結露を起こさない建物を建てましょう。

弊社のつくる『FPの家』は、『無結露50年保証』がついています。

暖かい家

省エネな家

健康・快適な家

は重要です。

でも

結露の無い家

も重要だと思いませんか?

結露で躯体が腐ったら、地震に強い訳ありません。

例え、耐震等級3の家であっても・・・。

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