調湿建材(後篇)

吸湿と吸水、とてもよく似た言葉ですが、実はその性質はかなり違います。

吸湿は水蒸気を吸う事。

吸水は水を吸う事。

どちらも吸い込まれるのは『水』なんですが、気体である水蒸気は目に見えません。

水は液体ですから目に見えます。

水と水蒸気では分子の大きさが相当違います。

建材には素材表面形状(孔の量や大きさ)の違いにより、以下の4つに分類されます。

①吸湿も吸水もするもの

②吸湿はするが吸水はしないもの

③吸水はするが吸湿はしないもの

④吸湿も吸水もしないもの

④はガラスや金属ですが、それ以外のものは①~③に分類されます。

その中でも自然素材のほとんどは①に該当し、その性質は一長一短です。

吸湿性は調湿が期待できるという意味では長所ですが、結露水などを吸い込むと乾きにくくカビや腐れといった問題を引き起こす短所があります。

また材料が湿った状態=含水率の高い状態では熱伝導率が大きくなるため、こうした材料では調湿性を活かし吸水性という短所を出さないような使い方を考慮しなければなりません。

同様に③も使い方に気をつけなければなりません。

その代表的な材料には、断熱材のグラスウールが挙げられます。

構成材のガラス繊維自体に吸湿性はありません。

湿気は繊維の隙間を通過するだけですが、この隙間には水を溜め込もういする性質=吸水性があります。

そのため、壁内に入り込んだ湿気が内部結露となりグラスウールの繊維間に拡がると、断熱性を低下させたり水滴化した水が土台を腐らせる原因となります。

断熱材には、グラスウールやロックウールなどの無機質繊維系以外に木質系のセルローズファイバーや羊毛などの自然素材系があります。

これらは調湿性断熱材と呼ばれることもあり、内部結露の防止に有効とされています。

そのためこれらを使用する場合には屋内側の防湿層を省略しても良いと考える人がいます。

屋外側の柱面に構造用合板を張っても良いと判断する人もいます。

でもこれは正しい判断・認識ではありません。

確かに調湿性断熱材は内部結露を抑止する方向の働きをしますが、内部結露に影響する要素は様々あり『調湿性断熱材を使っていれば大丈夫』という単純な話ではありません。

また調性断熱材が室内の湿度をコントロールしてくれることを期待する人も見受けられますが、それは過度な期待という認識が正しいと思われます。 

省エネエコ住宅 

設計究極マニュアル[増補改訂版] 

野池政宏 編・著

X-Knowledge 刊

より、一部を抜粋しました。

 

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