経年劣化の話

先日、知人との間で話題に上がったのが、断熱材の経年劣化についてでした。

ここで云う経年劣化とは、断熱性能の低下を指します。

様々な原因により、断熱材の断熱性能のが低下して本来の性能を維持できなくなる。

悲しい現象です。

発プラ系断熱材の場合は、中に含まれる断熱性の高い不活性ガスが空気と置換する事で、こうした現象が起きます。

もっとも素材や製法により、その程度&速度はマチマチですが。

水蒸気による、加水分解が原因になる断熱材もあります。

使用出来る温度範囲を超えてしまい、熱収縮するケースだってあるんです。

もちろん、地震や台風等による変形や、施工不良が原因になる事だってあります。

加水分解以下は、設計ミス及び施工不良になるのかな?

地震&台風による変形は不慮の事故扱いかもしれません。

最終的には、空気の断熱性能程度まで低下するようですね。

一方、無機系の繊維系断熱材の場合は、経年劣化がありません。

そもそも、繊維に絡まった動かない空気が断熱性能を保っていますから、置換そのものがありません。

加水分解も無いし・・・。

温度範囲以下については、発プラ系断熱材と同様です。

だから、無機繊維系断熱材のカタログには、経年劣化しないと謳われています。

劣化は全て、設計ミス&施工不良が原因だからです。

発プラ系断熱材メーカーとしては羨ましい限りですよね。

各断熱材の使用範囲が書かれた資料を転載しておきます。

断熱材選択の際の参考になると思われます。

でも、施工不良が出やすい断熱材ってどうなんでしょうか?

施工者による施工制度のムラが無くなる製品が、もっと増えれば良いのに!

私はそう思います。

こんな資料があります。

繊維系断熱材の施工による断熱性能の違いを示しています。

施工によっては、本来の46%の性能しか保持できません。

でも、こんな施工は良く見掛けるんです。

100mm入れたのに、施工が悪ければ46mm分の性能しか発揮できないなんて・・・。

この資料は、繊維系断熱材が濡れた場合の性能を示しています。

本来の40%程度の性能しか発揮できないとがわかります。

雨洩り

施工中の水分

壁内結露 等々

色々な原因が考えられますが、濡らしてはいけません・・・。

46%の性能しか発揮できない断熱材が、壁内結露を起こせば、更に40%減の18.4%になってしまいます。

雨洩り・施工中の水分は問題外ですが、壁内結露って意外と多いんですよね。

こんな資料があります。

イラストのような1m×1mの石膏ボード試験体を用意しました。

ひと冬の間に試験体を透過する水蒸気量は、1/3リットルだったと云います。

ところが、この試験体に2×2cmの穴を明けてみると、その透過量は30リットル。

1㎡の壁における4㎠の穴と言えば、C値4㎠/㎡に相当します。

外皮面積240㎡でC値2.0㎠/㎡の家であれば、3600リットルの水蒸気が移動することになります。

適切な防湿対策を取らなければ、危険ですよね?

一般的な構成の壁で、定常計算による結露判定をしてみました。

外気0℃/30%とし、室内温度を25℃/40%時の防湿シート施工アリの結果です。

特に結露は発生していません。

でも防湿シートの施工が完璧でなくなると、こうなります。

外壁合板と断熱材の間に結露が発生します。

発生した水分は、合板や断熱材を腐朽させるかもしれません・・・。

防風・気密性能の違いによる断熱性能の違いを示す資料です。

風が強くなるほど、両者の性能に差が出て来ます。

施工精度、湿気対策、防風・気密性能などこれらの違いによる断熱性能には格段の違いが生まれます。

計算上は、全て完璧な状態なのに・・・。

でも、これらはあくまでも施工上の問題なんですよね。

計算通りの性能を担保出来ていないのに、メーカー側は知らんぷりです。

もっとあったかいと思っていたのに、それほど暖かくない!

その原因が施工不良にあるとしたら、災難以外のなにものでもありません。

施工中の第3者検査でも、行えばいいのに。

最近は、サーモカメラを使った検査も行われているようですね。

こうした動きにも、期待したいと思います。

 

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