経年劣化の話(続編)

弊社も加入している新住協。

先日、新しいバージョンの『QPEX』データーが届きました。

QPEXは新住協で開発したQ値をEXCELで計算できるソフトプログラムです。

EXCELのマクロを利用し、誰でも簡単に選んで入力することで熱損失係数を計算できます。 

また、全国のアメダス観測地点の暖房デグリデー(その土地の暖房の量を積算したもの=その土地の寒さ)と日射量を全てデータとして背負っていますので、熱損失計算以外にどの位内部取得熱(日射)を得られるか、どの程度の暖房の容量が必要か、自然温度差(暖房なしで部屋温度が何度になるか)、燃費が幾らか(灯油量や電力量など)、CO2排出量はどの程度かが、データを更新すればその場で瞬時に結果が変わり施主様と仕様と燃費を見比べながらコミュニケーション出きるソフトです。

新住協 中部東海支部のHPより、一部を抜粋させていただきました。

早速アップデートの手続きを済ませ、新しいバージョンを試してみました。

自立循環型住宅のモデルプランを練馬区に建てた場合の計算結果です。

このソフトには、元々このプランのデーターが入っています。

そして、現行省エネ基準に相当する仕様になっています。

そこで今回は外壁部分の断熱材を厚さ105mmの高性能GW(16K)に変えてみました。

この時のQ値は2.55W/㎡・K、UA値は0.83W/㎡・K、ηA値は2.4。

少しだけ、現行省エネ基準よりも高性能になっています。

暖房・冷房負荷は7064kWh/2603kWh、暖房・冷房の年間費用は、それぞれ7.2万/2.6万円となります。

ここで外壁の断熱材を厚さ48mmの高性能GW(16K)に変えてみます。

これって、昨日の拙ブログで書いた『施工不良時の断熱材』に相当する厚さです。

本来は105mm分の性能を発揮する筈の断熱材も、適切な施工がなされなければ48mm分の性能しか発揮できません。

上図の3番目の施工状態だと思ってください。

計算結果は、こうなります。

この時のQ値は2.95W/㎡・K、UA値は0.99W/㎡・K、ηA値は2.6。

あれれ、現行省エネ基準を下回ってしまいました。

暖房・冷房負荷は8691kWh/2798kWh、暖房・冷房の年間費用は、それぞれ8.9万/2.7万円となります。

その差は、年間で1.8万円。

10年で18万円、30年で54万円となります。

ちなみに、30円/kWhで計算しています。

今後の価格上昇に伴い、その差はもっと大きくなるでしょう。

この金額、どう思いますか?

私には、納得出来ません。

だって、どちらの建物にも、同じ断熱材が採用されています。

当然、あなたが支払う材料費は同じです。

違うのは、断熱施工の精度です。

でも、工事費に違いは無い筈。

あったとしても、そう大差はないと思います。

おかしいですよね。

さらに気密性能の違いを加えれば、その差は広がります。

ここでは施工精度による断熱性能の違いを、相当する断熱材の厚さで比較しました。

でも一般的には、全ての断熱材がきちんと施工されている前提で計算されています。

「でも、全ての断熱材が間違った施工という事はないでしょ?」

と思う方もいるでしょう。

確かに、その通りです。

でも間違った施工を見逃す施工者&管理者であれば、かなりの部分で正しくない施工が行われていると思いますよ。

正しくない施工は壁内結露や、壁内通気によるさらなる性能低下を引き起こします。

しかも、正しい施工を行っている施工者の方が圧倒的に少ないと思います。

もしかしたら、正しい施工そのものを知らない人がいるかもしれない・・・。

しかも、こうした事実があまり知られていません。

正しい施工の重要性や、間違った施工の恐ろしさをもっと知って欲しいと思います。

 

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