気候変動の話⑥

気候変動に関する話を数回に分けてご紹介しています。

その第6回目は、ヤンガードリアスが再び起こるというお話です。

海洋大循環(熱塩循環)し極域の熱収支に大きく関わり、全地球の海水量にも影響を及ぼします。

また地球の熱放射の収支にも影響を及ぼすこともわかってきました。

圧倒的な体積を占める深層水塊は、大気のCO2濃度にも影響を及ぼしている可能性があります。

先に述べたようにウルム氷河期の後氷期初期、グリーンランドや北アメリカ氷床の融解によって低密度の淡水が大量に流入し、北大西洋での深層水の形成や沈み込みを極度に阻害したことが分かっていて、これがヤンガードリアス現象を引き起こしていたと考えられています。

海洋大循環は年に10~20㎞しか進まないゆったりとした流れで、巡環にはおよそ2000年の年月が必要と言われています。

従って、今までは地球温暖化の影響が深海底まで及ぶ時間もまた1000年は掛かるだろうと予測されていました。

でも実際に調査してみると、意外な真実が明らかになります。

1990年代にWOCE(ウォース:Wolrld Ocean Clrculation Experiment)という国際観測プロジェクトが行われました。

各国チームによる世界中の海表層から海底までの高精度な観測です。

日本でも、2004年に当時と同じ観測地点で北大西洋の低層水を再調査したところ、異変が起きていることが明らかになっています。

わずか10~15年の間に低層水温度が0.005~0.01℃も上昇していたんです。

しかもその原因は、南極大陸の太平洋側に面したアデリア海岸沖の表層の水温上昇でした。

これにより海水の沈み込み量が減り、この40年間の間に北大西洋の深層循環にまで影響を及ぼしていることが確認されました。

海洋研究開発機構と京都大学の共同チームは、低層の水温上昇を過去に遡って調べたところ、水温上昇の原因が南極のアデリア海岸沖の亜表層水の水温上昇に起因している事を突き止めます。

南極海で冷やされ、オーバーターンして深層水化する筈の海水量が少なくなります。

大規模の波動現象が発生し、深層循環が変動。

これによる北大平洋低層の熱バランス変化が原因ではないかと報告されています。

同じように北大西洋やインド洋でも深海底温度の上昇は確認されています。

わずか10年ぼで深海底の水温が変化してしまう』ことが認識され、益々ヤンガードリアス現象の再来を心配しなければならない事態になっているんです。

今まで、深層海流の温度上昇は千年単位での気候変動や氷河期~間氷期サイクルといった現象を考える場合にしか検討されませんでした。

深層海流の蓄熱量が関係しているとは、どの科学者も考えていなかったのです。

表層の気候変化が想像以上に速いスピードで海底に影響を与えるという事実が明らかになり、数十年から数百年単位の気候変動予測においても深層海流の温度変動を考慮する必要が出てきた訳です。

続く・・・。

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