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昨朝のブログの続きです。
慶應義塾大学の伊香賀研究室が行った、2014年度から2017年度までの4年間の断熱改修前調査における有効サンプルは1844世帯、2903名に及ぶそうです。
また、これらを対象にマルチレベル多変量解析モデルを構築し、男女それぞれの平均的な生活習慣として、各年齢の起床時最高血圧と血圧測定時室温との関連を調査しました。
室温が20℃から10℃に低下した際に、30歳男性では血圧が3.8mmHg上昇し、80歳男性では10.2mmHg上昇しました。
一方、30歳女性では5.3mmHg上昇し、80歳女性では11.6mmHg上昇しました。
このように高齢者ほど、そして男性よりも女性の方が室温低下による血圧上昇量が大きいことが確認されました。
また血圧が最も低くなる室温は、30歳男性では20℃、80歳男性では25℃、30歳女性では22℃、70歳女性では25℃となり、高齢者・女性ほど室温を高くすることが血圧抑制には有効であることが分かりました。
同調査では居間・寝室の室温と最高血圧の関係(同調査の平均的な男性モデル)について調査しています。
居間と寝室の室温の双方が、WHOの最低室温である18℃以上の場合には血圧は130mmHgでしたが、寝室が朝に10℃まで低下し、室間温度差が生じることによって132mmHgまで上昇しました。
また脱衣室が朝に10℃まで低下する場合においても同様の結果が得られました。
この結果は、住宅の居室以外も暖め、室間温度差を小さく保つことが血圧の上昇を抑えるために大切であることを示唆しています。
断熱改修を実施し、その前後2回の測定結果が得られた588軒/975人(改修あり群)と断熱改修をせずに2回の測定結果が得られた68軒/108人(改修なし群)について、起床時の血圧変化量を分析しました。
断熱改修前の血圧値・年齢・性別・BMI・降圧剤・世帯所得・塩分摂取・野菜摂取・運動・喫煙・飲酒・睡眠・外気温・居間室温・外気温変化量で調整して条件を揃えた場合、断熱改修によって起床時の最高血圧が平均3.5mmHg、最低血圧が平均1.5mmHg低下することが分かりました。
「健康日本21(第2次)」では、2022年までの10年間で、国民の収縮期(最高)血圧の平均値を4mmHg低下させるとを目標に、栄養・食生活・身体活動・運動・飲酒・降圧剤の服用などの対策が挙げられています。
これにより、循環器疾患による死亡者数が1.5万人減少すると推計されています。
単純に比較することはできないものの、この調査結果は住宅新築時の断熱性能の向上に加えて、既存住宅の断熱改修を積極的に推進することによって、最高血圧値が、この目標値と同水準まで低下することを期待し得る結果だと解釈できます。
ナイスビジネスレポート(2020.05.01付)に寄稿された慶應義塾大学理工学部システムデザイン工学科教授伊香賀俊治氏の記事より、その一部を抜粋させていただきました。
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